少しつりあがった目が不思議そうに私を見ていた。
私も同じように目を少し見開いて、周りを見渡してみたけどその男の子と私以外はいたって平然と菓子を食ったりベイバトルをしたりと普段どおり。
いったいこの子は誰なんだろうか。また男の子に視線を戻したら、あれからずっと視線を動かしていなかったらしくばちりと視線がかち合った。



「あぁ、君とキングは初対面だったね」



扉の前で突っ立ている私と、私を見ている男の子(キング、というらしい)の様子をみたトビーの言葉に「そういえばそうだったな」とゼオが相槌をうった。
キングくんの隣にいた正宗がおおざっぱに彼の説明をしてくれたが、いかんせん正宗の説明だ。トビーやゼオのような的をいた説明じゃあなかったけど、キングくんがなんとかブレーダーですっごく強くて正宗に勝った。ついでに仲良くなって居座ってる。ということは理解できた。



「えっと、とりあえずはじめまして。一応この三人の幼馴染やってます」



(これでいいだろうか?)
差し出した手と私の顔を交互に見るキングくんの様子にちょっと不安が募る。





「なぁ、こいつ正宗の彼女?」



「へ?」



思わず声が零れた。
え?だって挨拶もそうそうに正宗の彼女かって…言われても。実際違うし。
違うといえばいいのだけど、唐突なことに言葉が出なかった。


「ちっげぇよ。そんなんじゃねぇし」


見かねたのか正宗が助け舟を出してくれる。



「じゃあゼオの彼女か?」


「なんでそうなるんだよ」


「そんじゃあトビーの彼女?」


「残念ながら違うよ」



キングくんは何を考えてるんだ。
うんうん何かを考えてるキングくんになにか話しかけるのも気が引ける。
仲がいいのなら、さっきの発言の真意でも聞いてくれないのか。正宗のほうを見たら面倒くさいとでもいうように目を逸らされた。
ゼオもトビーも困ったように笑うばっかりだし。



「お前彼氏いたりする?」



「い、いない!いたこともない…です」



尻すぼみになる言葉に正宗が「ぷっ」と笑いを零したのが聞こえた。
正宗のやつ…人が困ってるっていうのに。
他の二人も傍観を決め込んでるし。キングくんはまた考え込んじゃってるし。
私はどうすればいいんだ。
変な沈黙のなかに、ぱんっ、と綺麗に手を打つ音が響く。キングくんだ。
さっきとは打って変わって清清しい顔をしている。ああ、こうやって笑う顔はどことなく正宗に似ていなくもないな。ぼんやりとそんなことを考えていたけど、キングくんの発言にそんな考え吹っ飛ばされた。



「よし、決めた!俺こっちに居る間全力でお前を口説く!!」




彼氏いないんなら遠慮することないよな!
元気よく、高らかに宣言したキングくんに、一瞬静まり返ったジムの中に頑張れ頑張れなんていう声援をおくる声があがる。
正宗たちまで「あいつは押しに弱いからガツガツいけば落ちるぜ」なんていらない助言までしてくれているもんだから、いよいよ私の羞恥心は爆発寸前だ。



「絶対にキングくんのことなんか好きになるもんか!」



自分でも本当に子供っぽいと思うような捨て台詞を吐いてジムを飛び出した。
少し熱くなった頬を誤魔化すように思いっきり風を吸い込む。絶対にキングくんのことなんか好きにならないんだから。


結局惚れちゃった





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