※盲目的なレイ
※ライとレイ





俺は心の底から彼女のことを好いている。
それは嘘なんかじゃなくて、本当に本当に好き。
長い時間彼女の素敵な部分も醜い部分も
彼女の存在について他人が知れることすべて見てきたと思う。
その分、彼女には俺の全部を曝け出してきたし、胸のうちのドロドロとした自分でも目を背けたくなるようなことだって、包み隠さず見せてきた。

多分俺の生涯で彼女をこえる女性なんて現われるわけがないんだ。
だってこれから新しい女性を好きになるなんて遅すぎる。なんといっても彼女以上に興味をひく、俺の全部を見せられる人なんているわけないし、正直いうといて欲しいとも思わない。


まったくなんとも甘ったるい思考だな。





「お前がそんな理由で里を捨てるなんて認めない」



責めるように嫌悪するように、俺のことを押しつぶすように視線をぶつけるライ。
そうだよな。お前はそういうと思ったよ。
お前にとってはそれが正義なんだろうけどな、俺だって一生懸けて尽くしたい相手ができたんだよ。その人を守ることだって正義といえるだろう?



「ライ、俺だって色々と考えたんだ」


「ならもっと考えろ、お前の考えが変わるくらい考えろ」


「理不尽な要求だな」



口から笑いを零せば、ライの眉間にさらに深く皺が刻まれる。
お前がどんな顔をしようが俺は決めたことを曲げたりしないさ。




「そいつに裏切られたらお前はどうするんだ」



ライの声が耳に響く。
すでに背中を向けていたから表情なんて分かりはしなかったけど、だいたいさっきと同じようなしかめっ面なんだろう。
「彼女は裏切らないよ」思った以上に大きな声が出た。後ろから「馬鹿」と小さく聞こえたけどもう答えるつもりはない。




(幸せを掴もうとして何が悪い)





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