「もし私が本気でトランクスと組み手とかしちゃったらどうなるんだろうね」


「あなた相手に本気なんて出しませんよ」


「もしもの話だよ、もしも」


「もしもですか、そうですねぇ…体中ばっきばきになるんじゃないですか?」


「…ばきばき?」


「どろどろのぐちゃぐちゃのばっきばきです」



いやぁなんて気持ち悪いんだろう。想像してみたが、なんというか…トランクスが一殴りしただけで吹き飛ぶのは明白だというのは理解した。
トランクスは色々な思考を一瞬のうちにめぐらせた私をみてクスクス笑う。
そりゃあ人造人間をぶっとばしちゃうくらい強いんだから、私なんて蟻を踏み潰す程度か。



「それじゃあ腕相撲は?」


「手が複雑骨折するくらいですかね」


「くらいってなによ、くらいって」


「だって俺死んだことあるんですよ?それに比べたら複雑骨折なんて」



私は死んだことないです。
まったく男女の力の差というが、これは差っていうレベルじゃないぞ。
なんなんだ一体。私は平手ビンタしたってぜんぜん痛くないんでしょ?「心は痛いですよ」そんなこと言ったってなにも出ないんだからね。ああもう力強すぎるの。
抱きしめてくれるときだって、思いっきり抱きしめてくれてるわけじゃないなんて…
私のためだと分かってるけど、力いっぱい愛の抱擁なんて素敵じゃない?憧れなのよ。



「あなたが不満なのは分かりましたが、俺だって結構我慢してるんですよ」


「私がもっとムキムキになればいいの?」


「まぁ体力をつけてくれるにこしたことはないです」


「体力?」


「ほらセックスするときとか」



俺は体力ありあまってるのに。にへらっと笑ったトランクスの頭に拳を落とす。
そういうことは言わないでいただきたい。
不本意ながら顔に熱が集まるのを感じていれば相変わらず変に微笑むトランクスにぎゅ、と手を握られた。私の手より随分大きな手を見て思わず複雑骨折の話が頭をよぎる。



「本気で握らないですから大丈夫ですよ」


トランクスがゆっくりと握った手を引っ張る。
優しいんだ。優しいんだけどね。



「トランクス、そっちは寝室なんだけど」


にっこりとトランクスが満面の笑みを浮かべた。柔らかく握られていたはずの手はいくら振りほどこうにもなぜかトランクスから離れない。実力行使されちゃあ抵抗のしようがないじゃないか。





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