思わず逃げ出そうと立ち上がれば、私が走り出すまえにスナフキンに手をつかまれそのままもとの場所に座らされる。
苦し紛れに「魚、」と浮きの沈む釣竿を指差すけど「物事には優先順位というものがあるだろう」とさらに強く手をにぎられる。優先順位ってことは、少なくと今の私は魚よりの重要なんだ。


「告白って返事もらうためにするんだろ?逃げちゃあ駄目じゃないか」


「スナフキン、物事は理屈で割り切れないこともあるんだよ」


「そうかい、じゃあ今ここで返事をしなくてもいいんだね?」


「なんでそうなるの」


「僕だって理屈で割り切れないこともあるんだってこと」


私が告白したっていうのにいつものと変わらないペースのスナフキン。
そういう何事にも囚われないところは好きだけど、今の状況だとあまり嬉しくない
「…意地悪だわ」「そうでもないさ」いつの間にか釣竿は静かになっていた。
逃げちゃったんだぁ、と頭のすみで考えればスナフキンがひょい、と釣竿を片付け始めた。今日は釣りをするんじゃなかったのか。私の視線に気付いたスナフキンはにっこり笑って「釣りはまた今度だ」と私に向き直る。



「で、君はどういう返答がお望みなのかな?」


「スナフキンが私のことどう思っているか素直に言ってくれれば…それでいいよ」


「君が喜ぶ答えじゃないかもしれないけどいいのかい?」


あい変わらず笑みを絶やさないスナフキン。
ああ、振るならひと思いに振ってくれればいいのに。こうも焦らすのはどういうことなのだろうか、焦らして焦らしてこっぴどく振るのがご趣味なのだろうか。いやでもスナフキンはそこまで酷いやつじゃない。



「ほらほら、そんな顔しないでよ。」


「だってスナフキンが」


「ごめんよ、別に君を悲しませたかったわけじゃあないんだ。」


僕だって男だからね、好きな女の子の前だと余裕ぶってみたくなるんだよ。

「そうなんだ?」と首を傾げれば、「そうだとも」とスナフキンが深く頷く。
「今ナチュラルに私のことを好きな女の子と表現したのはどういうこと?」「そのままの意味さ」「それじゃあわたしたちは両思い?」「ああ、僕の片思いは今晴れて両思いに変わったところだよ」


風は冷たいというのに、なぜか体はほんのりと熱い。
スナフキンは帽子を目深に被りなおして草の上に寝転がった。さっきまで平然としていたくせに今となって頬を赤くするなんて。私のほうがもっと恥ずかしいわよ


(フローレン、フローレン、あなたの言うとおり行動してよかったわ)



冬が来るまえに春が来た







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