風が冷たくなってきた。あたりもすっかり冬支度をはじめていて綺麗に色づいていた葉が寂しく風に揺られ落ちていく。すれ違う人「もう冬眠ね」と言葉を交わすのがお決まりの時期になっているが生憎私は冬眠というものをしないから曖昧に笑みを返す程度だ。そう、もう冬眠の時期なのだ。今年も彼を見送り、みんなと別れれば一人になる。まったく今年も私は何の行動もできぬまま冬を越すことになってしまった。来年こそは、と心の中で意気込むがそんなことも、もはや今年で何回目だろう…。虚しく吐き出す息は白い。


「今年もだめだったのね」


「ええフローレン。私やっぱり駄目かもしれない」


「そんなことないわ。あなたはとっても素敵な女の子ですもの」


「だって告白しようとすると、いつだってうまく話しを逸らされてしまうのよ」



優しい友人は困ったように微笑み「それでも、もうすぐ行ってしまうのよ?」と脅しをかけてくる。そんなこと知っているわ。知っているけどどうしようもないの。
零れそうになる涙を必死に奥へ引っ込めて無理やり笑いながら「また来年頑張るわ」とフローレンに言った。また来年頑張ると去年も言ったけど。去年の来年は今なのだけど。煮え切らない態度だとは自分でも思う。フローレンもそう思ったのだろう、だから彼女の声はすこしだけ尖っていた。



「あなたはさっき彼が話を逸らすといったけれど、それは違うわ」


「フローレン?」


「あなたが逃げてるだけじゃない。告白しようと思えばいつでもできるのよ。ただ好きだと伝えるだけだもの。」



「でも…だけどね、フローレン」



「たとえ釣りの話をしてようがココアの話をしてようが、あなたが好きとひとこと言えばそれはもう立派な告白じゃない」



険しい剣幕で一喝した彼女に返す言葉がない。心の奥を指差され頭がうまく回らなくてなにか言わなければと思うのに言葉が出てきてくれない。険しい顔を和らげまたさきほどの困ったような顔にもどったフローレンが宥めるように私に声をかける。
「ね?だから勇気をだして行動してみなさいな」私の心情をなにより分かっているであろう彼女が優しく頭を撫でてくれた。


頑張ってみようかな








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