なんでいるんだ。なぜこっちを見ている。 肩にかけたカバンがいきなり重くなった気がした。カバンというより気が重くなったんだろうけど。とりあえず私の通学路にどうどうと仁王立ちしこちらをにこやかに眺めていらっしゃる素敵な素敵な先輩方に声をかけた。 「先輩達……なんでいるんですか、家反対方向でしょう」 「そういうのは気にしない気にしない」 「そうだぜ?モテモテの俺達がわざわざお前のことを待ってたんだから感謝しろよ」 人当たりのよさそうな笑顔を向けるマルコ先輩といかにもナルシストな発言をかますジャンルカ先輩。いやいやいや、私はいつものように練習が終わって途中でみんなと別れたのだ。そのときみんなと「さよなら」とあいさつも交わした。もちろんマルコ先輩とジャンルカ先輩とも。 それがなぜ今私の目の前にいるんだろうか。 「俺達はイタリア代表だぜ?お前の亀みたいな歩行スピードを追い越して先回りなんて楽勝なんだよ」 「いやぁ途中まではちゃんとお前の後ろつけてたんだけどなぁ あ、さっき躓いてただろ」 可愛かったぞ!なんて笑顔のマルコ先輩が放った一言に死にたくなった。見られてたのか…見られてたんだな……恥ずかしいったらありゃしない。 私が鼻歌歌ってたのも全部見られてたなんて神様、これはなにかの冗談ですよね? そもそもなんでこの人達が私を待ち伏せしてるんですか。意味が分からないよ。 「先輩、もしかして私なにかしました?」 「いやお前は別に悪いことはしちゃいないさ」 「あえていうなら…そうだなぁ」 「「俺の心を盗んでいった」」 ……………。 くっさぁあああ!!なにそのくさい台詞っ!ネタだよね?先輩たち私をからかってるんだよね?本気で言ってるわけないよね?「言ってやったぜ」みたいな表情でこっちを見ないでくださいよ。なんて返せばいいのか分からないです。 「お前がマネージャーになったころからなんとなく気になってたんだよ」 「そしたらマルコも同じ気持ちだというじゃないか、そこで俺達は考えた」 「……で、その結果が」 「「お前に心を盗まれた」」 ぱっとみ恋愛マスターのような二人がこんなこと言うなんて……馬鹿なのだろうか。 もし仮に私に惚れたものだとして、恋のライバルと協力しちゃってるなんてどうかしてる。 だからこれから一緒に登下校しよう!とキラキラとした瞳を輝かせてがっしりと手を握る先輩方にああ、これから面倒くさいことになるんだろうなぁ。と半ば諦め気味にため息をついた。 「私フィディオ先輩のことが好きなんだけどな」 小さく呟いた言葉は嬉しそうにはしゃぐマルコ先輩とジャンルカ先輩の声にかき消された。 (心奪われるのは時間の問題) |