このまえ半田に好きだと言ったら恥ずかしそうにへにゃっと笑った。そのとき私は見た。半田の双葉(寝癖?)がちょっぴり動いたのを。



「というわけで半田、その双葉を触らせて」


「いや、なんで触らせなきゃいけないんだよ!てか双葉じゃねぇし」


「いいじゃない触るくらい」


「いやだっつってんだろ」




絶対に触らせまいと必死にガードしてくる半田を巧みなフットワークで翻弄しつつ、わずかにできた隙を見計らい一気に腕を伸ばす。が、さすがサッカー部といったところか。すばやい反射神経で私の腕を避けて見せた。



「俺達あきらかに不審者だぞ」


「不審者になるのがいやなら触らせなさいよ」


「いーやーだーねー」



じりじりと一定の間隔を保つのも疲れてきた。
だけどお互い引く気がないのは同じらしい。
このまま長期戦にもちこめば体力的にこっちが不利。となったら残るは一発勝負にかけるしかないでしょ。ここは一つ女の武器で勝負してみるか。




「そっか分かったよ。半田、私に触られるのが嫌…なんだね」


「いや、お前にというか、触られるのが嫌なんだよ」



変な啜り声はあげず、俯きながら少しだけ声を震わせる。お?これは結構リアルなんじゃないか?




「いいよ、もう諦めるから。双葉のことも半田のことも」

「は?俺のことも諦めるって、」



動揺した半田に隙が生まれた。よっしゃぁ!ここだ!!



「チェストォオオ!!!」

「っうぁ」



しかと握り締めてやったぞ!どうだまいったか!私の演技力を舐めてもらっては困るのだよ!!
悔しがっている半田の顔でも拝見しようと視線を双葉から移せば、なんでか顔が赤い半田と目があった。悔しそうっちゃあ悔しそうだが…ん?なんで赤い?




「どうしたの半田」


「う、うるさいっ!だから嫌だったんだよ!!」



あまりの慌てぶりに、強く握りすぎて毛根が死滅したのかと思った。いやでもそこまで強く握ったか?でも本人は痛かったのかもしれないし…優しくならいいのかな。
反省して今度は先程より優しく握る。あれ?なんかさっきより半田の反応が酷くなってる気がするぞ。



「半田?」


「あーもう!!くすぐったいから離せってば!」



ぺしん、と手を払いのけられた。くすぐったいって…くすぐったいって半田…それってつまり……



「双葉で感じるの?」


「言うなよ馬鹿ぁあ!!!」




いいことを知った。






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