俺は彼女が苦手だ。苛められてる彼女が嫌いだ。
俺が安易に声をかけたのがいけなかったんだきっと。正義のヒーローぶって声をかけて、助けてやる気もないくせに関わって。俺が円堂みたいに勇気も人望もあるやつなら少しは違ったんだろうな。それなのに、こんな俺に笑顔向けてなにもできない俺にありがとうございます、と言ってくれて。


彼女は知らないんだ。
彼女が誰かに罵られているのを俺が影から見ていたのを。かっこよく登場、なんて現実でできるやつなんてそうそういやしないさ。自分に言い聞かせるのが本当に情けなかった。



「半田先輩は優しいですね」



「そんなことないさ」



「優しいですよ、充分優しいです」



苛められてるなんて思えない程柔らかい笑顔で彼女は笑う。やっぱり俺は彼女が嫌いなんだ。彼女といると自分を否定したくなってしまう。自分が駄目なやつだって思い知らされるのが怖い。でもこんな俺を信じてくれてる人がいるというのはすごく心地いい。
もし、彼女が苛められてなかったら、俺は自分の気持ちを否定なんてしなくてすんだだろうけど、彼女が苛められていなかったら、出会うこともなかった。そもそも過去のことをどうこう言うこと自体男としてどうなんだろうか。
どうしようもないことを考えていると、俺の心中を知るはずもない彼女が突然立ち上がた。



「私、頑張って変わります。今は無理…だけど、この学校を卒業したらたくさん努力して変わってみせます」


なんの前触れもない、いきなりの発言に驚いて目を見開く。でも彼女の声音からして、あぁ、本気なんだなと思った。



「頑張って、半田先輩の隣にいて恥ずかしくない女になります」


俺だったらこんな状態で告白とか絶対できないよなぁ。自分変われるまで俺のこと好きでいるなんてそうとう一途だぞ。本気なのかこいつ。
ぐるぐると廻る思考。いろいろ考えた。短い時間脳みそをフル回転させて同じことを延々と繰り返し考えて辿り着いた答えは、単純なこと。
苛められてるとか、同情とか不甲斐なさとか、厄介なもの全部取っ払って、俺のなかに残るのは彼女が好きってことだ。



「お前が変われたときに、俺がお前のこと好きとは限らないぞ」



精一杯の強がりだけ吐いてみる。でも、彼女はきっと自分が苛められてさえいなければ、俺がなんの躊躇もなく彼女のことを好きだというのを分かっているんだろう。
他人の目を気にする嫌な男のどこを好きになったのか知らないけど、あと数年だけ待ってみよう。数年たったらまた考えてみよう。








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