痛い?って聞いたら絶対首を振るし、僕のこと嫌いかと問えば絶対、好きだよと答える。それだけ。今までそれが変わることなんてなかったし別段変だとも思わなかった。ときどきゼオが酷く顔を歪めて僕を睨みつけるけど、気にするほどでもないし。いわば公認の仲っていうのかなぁ。僕達の関係はみんな知ってたし、誰も文句を言ってきたこともない。街中に腐るほどいる恋人たちと同じ部類に分けられる、いたって普通の恋人同士。これって幸せなことだよね、想い想われなんてさぁなかなかできるもんじゃないでしょ?これが僕の見解。24時間くらい前の僕の見解。




「嬉しそうだね」


「君がいるから」


「ダミアンってさ、最近よく甘い台詞を吐く」


「吐くなんて汚いなぁ、囁くとかにしてよ」


「私もダミアンがいて幸せ」


目を細めて僕をみる彼女はゆっくりと口角を上げて僕の好きな笑顔で笑った。でもね、どうしてだか今はすごく気持ち悪く感じるよ。ばつが悪くて彼女から視線を下にさげ、テーブルに置かれた彼女の手に視線を移した。彼女の手は病的に白くて光を反射し輝いてる。綺麗なのにやっぱり今は僕の気分をとことん悪くさせる。



「君は嘘つきだ」



「ダミアンは疑り深いわ」



取り乱すこともなく平然と返答する彼女は笑みを崩さずにくるくると自分の髪を弄ぶ。




「僕、昨日は少し早く練習が終わったんだ」



ぴたりと手を止めて彼女は僕を見つめる。でもやっぱり余裕のようだ。一瞬視線を逸らしただけでまた僕を見つめるその目は柔らかい。




「私、ダミアンになにされても文句言わなかった。どんなに理不尽でも我慢したわ。」



すごく遠まわしだけど、何を言いたいのかなんてすぐ分かった。




「ダミアンも多少のことは我慢するべきだと思う」




終わりにしようとは言わないんだね、なんて口が裂けてもいえなかった。これが彼女の可愛い仕返しのようなものなんだと、恋人がよくする些細な喧嘩のようなものだと決め付けて、このまま続けるしかない。だって終わりなんて悲しいじゃないか。







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