私の首に腕を巻きつけ上機嫌に擦り寄ってくる彼はさながら猫のようだ。甘えられる分には可愛らしく結構なのだが、普通の猫と違って恥ずかしいことをさらりと言ってのけるのが難点である。



「僕ね、やっぱり君が大好きだよ」


「ほんっとうに恥ずかしいですから少し自重してください」


「恥ずかしい?じゃあ僕のこと好きになってくれたの?」


「それとこれとは話が違うから」




そっかぁそうだよね。猫撫で声で嬉しそうに囁いてクスクスと笑ったダミアンだけど、さっきより腕の力が強くなったあたり内心穏やかでないのかもしれない。このまま首でも絞められたら確実に死ぬ自信がある。なにせこの前腕相撲したら1秒もたたないうちに机にめり込む勢いでノックアウトされたという実績があるのだから。(赤く腫れた手を舐められたのは忘れられない)
少しだけぼーっとしていれば、それが気に食わなかったらしいダミアンにべろりと頬を舐められた。こいつは舐めるのが好きらしい。つくづく動物みたいな子である。



「僕さ、君にいっぱい好きって言ったんだよ」


「うん、嫌というほど分かってる」


「分かってないよ、さっきの好きで合計ひゃくさん回目…ん?ひゃくよん回目かな?…とにかくとんでもないくらい好きって言ってるんだ」




「あと何回言ったら好きになってくれるの」甘ったるい声で可愛らしく小首を傾げる姿は実に愛らしい、愛らしいのだが如何せん慣れとは怖いもので愛らしさどころか少し不気味でもある。傍から見れば素直な子なのだろうが、私的にこんなところに居るという時点で頭のネジがどこか飛んでしまっていると考えたほうが納得いくのだから困る。



「あのね、いくら好きをあげたって誰でも好き返してくれるとは限らないんだよ?」



押し付けだけじゃ相手に分かってもらえないのだからね、と諭すようにいえば、ふーん、と納得してくれたような反応が返ってきてほっとした。これで少しは普通の愛情表現ができるようになってくれればな、なんて淡い思いを抱いていればそれを打ち砕くように首ががくん、と傾いた。
私の喉を圧迫する腕の持ち主は不満そうに顔を寄せて私の頬に自分の頬を押し付けてくる。うん、何度も言うようだけど愛らしいのだ、けど腕が残念な感じ。この腕なければ少しはマシなんですってば。



「君は僕を好きになってくれるよね」


「ちょ、ダミアンくるし…い」


「だって僕が君のことを好きなんだもの、君も僕を好きになってくれないと楽しくないよ」




やっぱりこいつは色々おかしい気がする。





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