「ダミアンそこの本取って」 「やだ、めんどい」 たかだか腕をちょっとだけ伸ばせば届く距離にある私の本をとろうともしないダミアンは悪いと思っていないんだろう、優雅にコーヒーをすすってやがる。しょうがなく重い腰をあげて自分で本を取に行く。まったくこいつは私のお願いをきこうとしない。嫌なやつだ。顔はいいくせに。 「可愛くないよね、ダミアンって」 「え?そんなの自分の顔みてから言ってよね」 「ほら、女の子にそんなこと言っちゃうあたり可愛くない」 性格が可愛くないのよ、と指摘すれば馬鹿にしたように目を細めて鼻で笑われた。やれやれといったふうに首をふり、追い討ちをかけるように大きなため息をつきふんぞり返るダミアン。人を馬鹿にするのがお上手なようで。 「君も可愛くないよね」 「それは外見的に?内面的に?」 「存在的に」 さすがにむかっときて手に取った本で軽く殴ってやった。 「ほらね?可愛くない」けらけらと殴られた頭を痛がる素振りもみせず私を指差して笑う彼にもう一度、さっきよりも強い本の角アタックをくらわせてやった。 「暴力的だね」 「誰のせいだと思ってるの」 「えーでも事の発端は君のせいじゃないか」 「ダミアンは男でしょ?私は女の子」 女の子に可愛くないは禁句なんです! どかりとダミアンの隣に腰掛けていらいらムードを全身から出す。どうだ、謝る気になったか。彼が謝るなんて思えないけど、どうしても私が怒っているということを思い知らせてやりたい。 「可愛いって言われたいんならもう少し態度を改めるなりすれば?」 「これが私なんです!ありのままの私なんです!」 「うっわ、えらく強情だね」 そんなところ、可愛いと思うよ?にっこり笑ってダミアンが言った。 かわ…いい?いやいやいや、今の今まで可愛くない談義をしていて、突然なんで可愛いなんて言い出したんだこいつ。思わずダミアンを凝視すれば首をかしげた後やっと気付いたのか顔を真っ赤にさせて慌てだした。 「いや、今のは単なる間違いで!僕はぜんっぜん君のこと可愛いだなんて思ってないから!」 「嬉しいなー可愛いだなんてダミアンの口から聞けるなんて」 「うるさい!ちょっと本音がでただけだ!!」 一瞬の沈黙の後、さらに顔を赤くさせたダミアンは私の頭を一発殴って部屋から飛び出していった。 (ダミアンにも案外可愛いところあるんだ) |