俺は世界一になれているのか。やれナンバーワンだ、最強だと豪語するはいいが俺は本当にそれになれているのだろうか、分からない。時々なんだか自分の口から出てくる言葉がとってもちっぽけな気がするのも、心のどこかで自分に自信が持ててないだけかも。



「お前はどう思う」


「え、私?」


「俺はちゃんと世界一なのかな」


「うーん…世界は広いもんね、それに銀河とかキョウヤさんもいるし」


「それは俺が世界一じゃないとオブラートに包んで言ってるわけ?」



そんなことないよ!と慌てるこいつは嘘が下手だ。やっぱりそうなのか、とため息を零せば申し訳なさそうに肩を縮こまらせてごめんなさい、とぼそぼそ言われた。別に怒っちゃいないさ、怒ってはいないけどさ。なんかこう…改めて事実を突きつけられるとショックだな。



「俺は世界一になれるのかな」


ちょっと心が荒んで一番不安で一番考えたくないことが口を突いて出てきて内心しまった、と慌てて口を噤んだが俺達を包む空気が少し淀んだ気がした。弱い俺なんて見たらこいつはどう思うだろう。幻滅するだろうか。



「…正宗は頑張り屋さんだから大丈夫だよ」



でも、聞こえた言葉はそんな響きはなくて、むしろ俺の全部を分かってるみたいにどこか自信気な声音だった。



「なんでそんなこと言えるんだよ」


「だってそうなんだもの」


「意味分かんねぇ」



綺麗に笑いながら今度こそ自信満々に言い放ってくれた。なんで俺のことなのにお前がそんなに胸張って言うんだよ。悔しいけど誰かにそういってもらえて安心してる自分がいる。いつの間にかしっかりと握られた手から暖かさが侵食して凝り固まっていた不安や焦燥を溶かしてくれるようだった。



「それに正宗は私の中では常に一番だよ」




唖然呆然の俺を横目に「なんか恥ずかしいな」なんて顔を赤らめるこいつは俺を元気付ける能力だけは秀でているんだな。まったく調子くるう。
結局ベイで世界一になれるかなんて分からないけど、たくさん努力していつか勝ち取ってやろうそれでもって、ずっとこいつの一番に居座ってやる。



「よっしゃあ!なんか元気でたからちょっくら特訓してくる!」


「うん、いってらっしゃい!」



だからせめてお前の前では笑顔で。





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