自分の持つ力の六割くらいの強さでがつん、と殴ってみた。私てきには少しくらいめり込む程度はしてくれると思っていたのに、まったくそんなことはなかった。「痛いんだが」と困惑する彼を無視して今度は七割くらいの強さで殴ってみる。



「なんでそんなに俺の腕を殴るんだよ」


「筋肉があるから」


「そんなの誰にでもあるだろ」


「レイのは特別なの」



私と年齢は一緒くらいなのに腕の太さはなぜか全然違うのだ。私の折れそうな腕に比べてレイの腕はそれはもういい具合に逞しい。私がどんなに殴ったってびくともしないのだ。いまだがつがつと殴り続ける私にレイは困ったように微笑んでから、殴られてないほうの手で私の頭をゆっくり撫でた。普通なら怒ったっておかしくないのに。レイは私をあやすように頭を撫でる。それがなんだか悔しくて殴る手を止めればそれはもうよくできました、とでも言う風に満面の笑みを湛えながら今度はぽんぽん、と軽く頭を叩かれるのだ。いつだってそうだ。いつだってレイは笑うのだ。



彼は強いから時々すごく不安になる。






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