なんで私の彼はこうなんだろう。


「アレク、その手に持っているのは何」

「糖分だ」

「あ、うん糖分だけど、そういうのじゃなくて」

「カップケーキ」


しれっとした顔でカップケーキを一口齧ったアレク。なに堂々と彼女の前でそういうものを食べてるのよ。アレクの後ろのほうで、このカップケーキをアレクに渡したであろう女子達が、ちらちらとこちらを窺ってはコソコソとなにかを耳打ちしている。イラァ、と怒りが湧き上がって後ろ手に持ったものを握りつぶしそうになった。ごめんね私のカップケーキ、どうやら君は私の胃の中におさまることになりそう。



「疲れた体に糖分はいいからな」なんていう彼にそんな私の複雑な思いは分からないか。このまま居ても虚しくなるだけだし、トイレにでも行ってこのカップケーキを食べようかな、と思い一歩後ろに下がれば、ずいっとアレクの手が私の目の前に出された。


「え、なに」

「お前はくれないのかよ」

「だってアレク、もう他の女子からもらってるじゃない」



それ、とアレクが手に持つカップケーキを指差せば、一瞬停止したのち、ぽーんと近くのゴミ箱へそれを投げ捨てた。唖然とする私と後ろの女子たちを気にする素振りも見せずに「はやくよこせ」と催促するアレクにおずおずと持っていたカップケーキを手渡す。


「ア、アレク、あのカップケーキいいの?」

「だってあれがあるとお前、カップケーキ渡さないだろう」



それに、と続けるアレクはどこか楽しげに微笑んで、ぱくりと私のカップケーキに齧り付いた。



「お前が作ったものほど嬉しいものはないから」



気力まで回復するなんて、他の女子のものより断然お前のカップケーキのほうが合理的だ。
合理的ならなんでもいいのか、と思ったけどアレクの言葉がやけに嬉しいから今回のところは何も言わないでおこう





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