ずっと前から好き、すっごくすっごく好き、大好きなんて言葉じゃ表せないくらい好き。パクパクと口を動かしてゴールの前にたたずむロココに声に出せない思いを吐き出す。傍から見れば空気を食べてる変な奴だろう。休憩にしましょう、と呼びかける夏未の声がびりびりと体に響いた。眩しい笑顔を振りまいてこちらに向かってくるロココに、今度は小さく好き、と口を動かした。ロココから見たら私の頬が少し引きつったようにしか見えてないかな、それに安心して落胆する私は一体彼になにを求めてるんだろう。



「疲れたぁ」



「練習ハードだもんね、お疲れ様」



「ハードなんてもんじゃないって、拷問だよ」




ふざけたように話すロココ。そんなこと言って、本当は練習たのしくて仕方ないくせに。もちろん、と笑顔で即答した彼の眼に私は映っているのだろうか?きっとサッカーのことしか眼中にないかな。うん、きっとそう。私なんかがサッカーを押しのけてロココの隣を勝ち得るなんて、無理なことだ。分かってるよ。

でも、何回も声に出さずに吐き出した言葉は、空中に霧散して消えるなんて優しいことしてくれなかった。吐き出しては戻ってくるなんて、そんなサイクルいらないのに。



「ねえ、その魚みたいなのやめな」



え、とロココを見やる。魚みたいなの?考えてすぐ思い当たる節が見つかり、慌てて口元を手で覆う。



「空気食べておいしい?」


「お、いしくない、それに食べてるわけじゃ…ない」



そう、と呟いたロココの言葉を最後に沈黙が続いた。後悔と羞恥と、少しの開放感。
そっと頭に乗せられた泥だらけの手が、ゆるゆると私の頭を撫でた。




「苦しいなら、吐き出しちゃいな」



サイクルが崩壊する瞬間











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