特にすることもなかったのでセインの隣に座っていれば、いきなりほっぺたを摘まれぎりり、と左右にひっぱられた。いや、いきなりすぎてなんの防衛もできなかった。そして真顔でひっぱるのやめてください。すごく怖いです。私なにか悪いことしちゃったかな?あれか、私の隣に気安く座るなとか?で、でもこの前は隣に座って、頑張って手まで握ったけど、なんにも怒られなかったし…。



「笑え」



わ、わわ、笑えとおっしゃるんですか、この状態で。セインの考えがまったくもって理解できない。爪が食い込み熱をもつほっぺたを、ひん曲げて笑えと?なんだろう、私の変顔が見たいのかな。とりあえず、精一杯にこっ、と笑えば(笑えたのか?)ほっぺたを引っ張っていた手が離された。



「気色悪い笑いかたをするな」



「だ、だってセインがほっぺた引っ張るから!」





ひりひりするほっぺたを擦りながら抗議すれば「変な顔」と薄く笑われた。あんまり笑わないセインが笑ったんだから、そうとう変な顔をしてんだろう。想像して、私も笑った。ひとしきり笑って目元に溜まった涙を拭っていたら、なぜか今度はセインが私の手を握ってきて、吃驚して目を見開く。相変わらず口元を緩めながら微笑んでいるセイン。セインの笑った顔と微笑んだ顔が一気に見られるなんて今日はなんて運のいい日なんだろう。それからセインの指が私の指を絡め取るのにそう時間はかからず、赤面する私を見てセインはまたさっきの笑みを零した。



「私は、君の笑った顔が一番好きだ」








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