幽霊を信じるか?と問われれば僕は迷わずイエスと答えるだろう。科学的じゃない、空想だ、と否定する輩も多いが、それでも僕はそういう類のものは存在していると思っている。ある程度の常識を蓄られた年頃の今、だからこそ、そういう話は否定したくなるものだが、如何せん僕の幼馴染は、そういうものが見える体質なのだ。小さい頃から「ねぇ、そこに居る人知り合い?」とか「あの人ずっと私たちのこと見てくる」とか誰もいない空間を指差すことなんて日常茶飯事。その頃は僕も彼女もあまり実感が湧かなかったが、小学生に上がったばかりの夏、僕と彼女と友人たちで海に行ったとき、初めてこれが変なことだと気付いた。水死体のやつを見てしまったらしい彼女が「気持ち悪い」と嘔吐してしまっときだ。僕はまだ水死体がグロいだとか、そんな知識持ち合わせていなかったから、いつもと違う彼女の背をただただ撫でてやっていた。ざわつく周りを不思議に思いふと視線をあげたとき僕は、彼女を見る友人たちの眼にすべて悟った。



「気持ち悪い」



嘔吐する彼女を見る友人たちの眼はそう物語っていた。嘔吐した彼女のことが気持ち悪いのか?と思ったが、すぐに「なにかを見て」嘔吐した彼女が気持ち悪いのだと気付いた。そっか、彼女の見るものは見ちゃいけないものなんだ。そのときから彼女はそれらを見るたびに怖がるようになった。それが死んだものだって僕も彼女も理解したから。





「リーフ、ずっと私の傍にいてつまらなくないの?」


「別に、君と話もできるし楽しいよ」


「でもリーフ、あの時からずっと私のこと気にかけてくれてるし…面倒くさくない?」


「だって君がいつグロいものみて吐くか分からないし、そういうとき事情を知っている僕が居たほうがいいだろう?」




あれから随分たったけど、相変わらず彼女には見える。そろそろ耐性とかできてもいい頃なのに、臆病な彼女は見るたびに僕の後ろに隠れる。酷いときには僕の腕に抱きついて顔を埋めてきたり。別にそれは嫌じゃないし、年頃になった僕は彼女の傍にいるうちに、いつの間にか彼女を好きになっていたため、その行動は嬉しいと感じる。




「私リーフがいないとダメだなぁ」


「そう思うなら、ずっと傍にいれば?」




それが異性として向けられた言葉か、幼馴染として向けられた言葉か、どちらにしても彼女に惹かれるのに変わりはない。やんわり笑った顔を引っ込めうつむき、ふいに手を握ってきた彼女。僕は道路の端に視線を滑らせた。




生憎、僕には見えないけれど、彼女の見る未来と僕の見る未来だけでも同じであればいいな、なんて






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