七夕

「もし、トムさんと俺が一年に一回しか会えなかったら…どうします?」

仕事も終わり、さぁ解散しようと静雄に声をかけようとした時、静雄が急にそんなことを言い出した。


そんな静雄になんかあったのか、尋ねようとしたトムは言う前に今日が何日かを思い出して言葉を飲み込む。


「あー…今日七夕か」


トムはそう呟いて空を見上げる。今日は生憎曇り空で残念ながら天の川は見えそうにない。


「好きな人と離れ離れになって、そんで年に一度会えるか会えないかなんて…俺には堪えられません」

隣を見ると静雄もトムと同じように空を見上げていた。その顔は泣きそうに歪んでいる。








こんなの、単なる御伽噺なのに。
彼はそれを思って泣くのだ。それをというより、俺を思って。
それが分かるから俺は少し心苦しくなって。
俺は彼を安心させてやりたくて小さく静雄、と呟いてその震える手を握った。静雄の身体が一瞬大きく揺れ、涙を溜めた瞳の中に俺を映す。
目があった瞬間、にこりと笑ってやる。


「俺はどこにもいかない。ずっと静雄の傍にいる。…だからほら、笑って、な?」


そう言えば、目の前の後輩は目を細めて涙を零し、笑った。





あぁ、今度織り姫と彦星が会えるのは何年後だろう。雨が降ったり曇りになったり。
きっと今日みたいになかなか会えないだろう。
でも、きっといつかまた会う日が来るはずだから。

その時は静雄、
俺はお前と一緒にまたこの空を見るよ



七夕
(今度はどうか、笑顔で再び)





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