Let's game!!【後半】 「こ、これでいいんでしょうか…」 「ベリーグッドだよ、杏里!!やー杏里のエロさに俺今日もときめい…」 「はい、じゃ次行こうか」 「酷っ!!最後まで言わせろよ!」 只今6回目のターン。 始めは尻文字やらなんやらで軽度のものだったのだが段々重度なものに変わってくる。 「王様だーれだ!!」 その掛け声と同時に一斉に割り箸が取りあげられ、自分以外に見えないように隠す。 俺の番号は8番。 王様は… 「はいはーい!遂に来ました、俺のターンっ!!」 紀田は王様の印のついた割り箸を持ってニコニコ笑いながら手をあげる。 「じゃあ………………… 5番と8番がポッキーゲーム!!」 ん?8番? いや、待てよ。 5番って… 「ん?俺、トムさんとだ。」 臨也とか!! 「やだー、トムさんそんなに俺のこと見つめないでくださいよぉ。照れちゃうじゃないですかぁ」 右隣にいる臨也はクネクネしながら口にポッキーをくわえる。 …まぁ途中で折ればいいか。罰で全員に一杯奢るくれぇなら……ってそれもかなり負担だな。 トムは冷静にこの後のことを判断しながら臨也とは反対のポッキーをくわえる。 「それじゃスタート☆」 その掛け声と共に両者ポッキーを食べ始めるのだが。 (臨也食べんのはやっ…) そんなことを思っているうちに段々と二人の顔が近づきそして… チューッ 「っ!?!?」 「トムさん、ごちそうさまっ」 口を押さえて驚く俺に臨也はニコニコしながら笑いかける。 …あいつは男とキスして大丈夫なのか?? しかしトムがそんなことを考える間もなく、次のゲームが続く。 「やった!!次アタシの番!」 王様ゲーム開始してから10回目のターン。 狩沢が目を輝かせながら割り箸を上にあげる。 何故かぞわり と寒気がして背中に汗が流れる。 悪い予感、当たるんだよなぁこれが。 「じゃあねぇ… 1番と6番がディープキス!!」 トムは自分の持っている割り箸をそーっと見る。 おっ?これって9番じゃね?よしっなんとか2回目キスはまねがれ… 「田中さん、それ6番です…。」 てる訳ねぇよな、門田。知ってんべ、んなこと。 トムは出来れば杏里ちゃんか竜ヶ峰君で…と願うのだが、そんな簡単にことは運ばず、 「トム坊、おいちゃんのお相手宜しく頼むよぉ?」 「ふざけっ…んん」 赤林はトムの腰に手を回して口をふさぐ。 固く閉ざされたトムの唇を赤林の舌は強引に開かせて無理矢理割り込んでくる。 そしてその舌は、慣れたような動きでトムの舌に絡まりトムの口内を犯していく。 「ん、ふぁ……」 トムは耐え切れずに鼻から甘く苦しそうな息を漏らす。 周りからゴクリと息を呑む音が聞こえてすぐ声を押さえようとしたのだが、その頑張りは虚しく散ってしまった。 それから何分経っただろうか、赤林はやっとトムから口を離す。 二人の間には銀の糸が垂れ、すぐにぷつりと切れる。 トムは息を乱しながら赤林を睨むのだが、睨まれている側としては涙で溜まった目で睨まれても痛くも痒くもない。 逆に誘われているとしか思えず、赤林はもう一度というつもりでトムの顎を掴み、顔を寄せた。 トムは近付いてくる赤林の顔にギュッと目をつむる。 すると、 「ちょっと、」 低い声が聞こえて、近付いてきていた赤林の動きが止まる。 トムはその声にはっとして顔をあげる。 「しず、お」 静雄は、ずっと見ていたのだろうか。 今までのこと、全部。 全部。 「静、」 「すいませんけど、俺とトムさん付き合ってるんでそういうのは」 静雄は赤林の前にいたトムを自分の横に立たせた後、懐から財布を取り出して諭吉を数枚をテーブルに置く。 「じゃ俺ら席抜けさせてもらいます」 静雄はペコッと皆の方に一礼をしてトムの手を掴んで店を出た。 温かく大きな彼の手は、少しだけ、震えていた気がした。 ―――――――――― 「…」 「…」 星空の下、トムは静雄の後ろを小さな歩幅で歩く。二人の間には今だ沈黙しかない。 (やっぱり……怒ってるよな、あんなの巻き込まれて。しかも俺と付き合ってるなんて嘘つかせちまったし) トムは無言の空気に耐え切れずに上擦った声で静雄に話し掛ける。 「えっと悪かったな、その、色々と迷惑かけちまって。せっかく一緒に飲もうっつってたのに」 「…いえ、別に」 (うわっ…やっぱ怒ってんべ) こりゃ俺今日死ぬかもな…なんて心の中で思いながらもトムは静雄を見る。 「それに俺のために付き合ってるなんて嘘ついて…ほんとすま…」 「それ、本気で言ってんすか?」 「えっ…」 静雄はクルッと体の向きを変えてトムと向かい合わせになる。 その表情はやっぱり怒っていて、でもどことなく辛そうだった。 「俺、好きじゃない人のためにそんな嘘つけるほど心広くないです」 泣きそうに声を震わせる静雄は両手を広げてトムの体を抱きしめる。 トムの体がギシッと音をたてて軋む。 「お、おい。静雄、ちょっ…一旦落ちつ」 「気付いて、気付いてくださいよ。俺がどんなにあんたのこと好きなのか」 「………静雄」 背中に回る静雄の手は何かに怯えるように震えているのが伝わる。 あぁ、そうか。 俺はこいつのこと… 彼の肩にトムは顔を埋める。 分かってるつもりで、何も分かってなかったんだ。 トムは声にならない声で静雄に ごめん と呟き、彼の背中に自分の腕を回そうと腕を伸ばした。 のだが、 「で今日分かったんですっ。」 「へ?」 静雄は急にトムの体をガバッと離しトムを見つめる。 トムは行き場のなくなった腕を今更引っ込めることも出来ず、開いたり握ったりを繰り返す。 「こんな生温いアピールじゃ駄目なんだってことが」 「…はぁ」 「という訳で早速ホテルにいきましょう」 「…はぁ……っては?いや、静雄俺は」 トムの必死の訴えなど耳にも入っていないのか、静雄はトムを引きずって夜道を歩いていく。 …トムはこの後、二度と王様ゲームなどやるものかと神に誓うのであった。 【おまけ】↓ 【居酒屋内にて】 「あーあ、赤林さんが調子乗るから全員回んなかったじゃないですかぁ」 「わりぃね。ちょーっと歯止めが効かなくてよ」 「そうだよ!!ドタチンとトムさんくっつけようと思ってたのにぃ」 「狩沢、お前は黙ってろ。遊馬崎、お前も何とか言ってやれ」 「狩沢さん……俺はその二人にメイド服を着させたら萌えると思うっす」 「お前もかっ!!」 「まぁあんな田中さんの顔見たら誰でもそうなるって。なぁ紀田少年」 「そうっすよね。田中さんって…格好いいうえにエロかったんだ」 「紀田君、何納得してるの;ほら園原さんも引いて…」 「田中、トムさん」 「えぇ!?まさか園原さんまで!?」 そんなこんなで二人がいなくなった居酒屋では、こんな会話が響いたとさっ。 Let's game!! (良い子の皆さんはけして真似をしてはいけません) |