これが人を愛すということだ 取り立て午前の部が終了。 俺と静雄の昼飯は健康によくないファーストフードと決まっているようなもので、勿論今日もそれは変わらなかった(たまに、ごくたまに露西亜寿司ということはあるが) しかし今日は少しだけいつもと違って、天気がいいですねという静雄の言葉から公園の隅にあるベンチで食べることにした。 天気がいいと飯も上手いような気がした。 それが静雄の手作り弁当だったらより上手いのになぁ。 俺は熱い珈琲を啜りながらそんなことを考えて静雄を見る。 いつもの事だが、こいつがシェイクをきゅいきゅいと飲む姿はなんとも愛らしい。 きっと今日が快晴で気分も晴れやかだったからだということもあるだろう。 静雄のそんな可愛い仕草を見ていたら、柄でもないが恋人らしく甘い話をしてみたくなって。 俺は紫煙を吐き出して、少し高い位置にある後輩の瞳を捕らえる。 「なぁ静雄」 「なんすか?」 声をかければ静雄は、シェイクから俺へと視線を流す。 ったくこいつはこれだけでエロく見えるんだもんなぁ。そんなんしてっと取って食っちまうぞ馬鹿。 俺はその絡まった目から逃れるように目線を外し、煙草を再び口元に運んで呟く。 「俺のこと、どんくらい好き?」 ぐしゃりと隣から何かが潰れる音がした。 その発信源を見ると、シェイクの容器が見るも無惨な姿にされていてあぁあ、勿体ねーなぁと思った。 「えっ…あの、急にどうしたんすか」 「ん?ただちょっと言ってみただけだべ」 「はぁ…」 思った以上に気の抜けた返事。 あれ、と心の内で首を傾げる。 静雄なら顔赤くして、熱く語ってくれると思ったのにな。 このままじゃどう頑張ったって甘い話になりそうにない。 俺は静雄に飛び散ったシェイクを拭くようにハンカチを渡し、俺は、そうだなぁと空を仰ぐ。 「俺は、お前のこと一生離したくねぇって思うくらい。つーか一緒になりたいってくらい、」 かな、と言う間にチラリと横目で静雄の顔色を伺う。 しかしあまりさっきと反応が変わっておらず、がっくりと肩をおとす。 そして自分の言葉を再確認。 もしかして一緒になりたいって変な意味で受け取った? それならちょっと誤解を解きたいよなぁ。 いや、そんな意味も少し、いや大分入ってたけど。 (って俺は変態か) なんだか色々嫌になって、俺は小さな溜息と一緒にこめかみを押さえる。 俺っていつからこんな独占欲強くなったんだろう。 くわえたままの煙草が少し下に傾く。 その時静雄が静かな声で あっと口を開けた。 「トムさん。煙草、危ないですよ」 俺はこめかみにあった手を降ろして口から煙草を離す。 くわえていたその煙草はすでにフィルター手前。 サンキュと言って携帯灰皿の中に煙草を捨てると静雄が真剣な面持ちで俺をジッと見つめてきた。 あれ、俺ちゃんと環境問題改善に取り組んだよな。 煙草ポイ捨てなんてしてねぇよな。 あれ、じゃあなんで俺静雄にこんな見つめられて… 「トムさん」 「お、おぉ。どした?」 静雄の気迫に押されて少し吃る。 「さっき俺にトムさんのことどのくらい好きか、って聞いたんですよね」 「そうだよ」 「じゃあ言います。俺は――――」 動く静雄の口。 そこから吐き出される言葉は、 「トムさんのためなら死んでもいい、ってくらい貴方のことが好きです」 俺には甘過ぎるよ、静雄。 これが人を愛すということだ 「…やめるべ、この話」 「トムさんからいい出したんじゃないすか」 「う゛っ…」 (可愛いなぁトムさん) ―――――――――――― Title:レイラの初恋 |