真夏の輝き


※学生時代





真夏の太陽が照り付ける快晴の空。
深い青は俺の体を光と一緒に包み込む。
俺は空が好きだった。
だからよく授業を抜け出してこの屋上にくる。
…まぁここにくる理由はそれだけじゃねぇけど。
俺は空と見つめ合っていた視線を外して目を閉じる。
なんだかもう何も考えたくない気分だった。
だけど、いつも彼は俺をそうさせてくれないのだ。


「しーずおっ」
自分を呼ぶ声と一緒に俺の体に陰がさす。
もちろん、太陽が雲に隠された訳じゃない。
俺は はぁと小さくため息をついて目を開ける。
目の前には眼鏡をかけた真面目な顔の男。
俺はこれが誰かを知っている。
「トムさん…なんでいるんすか」
「サボったから」
「そんなの見て解ります。」


呆れた声でそういえば、トムさんは笑う。
俺はこの顔もよく知っている。
彼をみつめながら俺はゆっくりと体を起こして呟く。
「トムさん受験生でしょ。俺に構ってる暇あるなら勉強してた方がいいですよ」
「いや、受験生は息抜きも必要だべ?」
「トムさんは息抜き多過ぎです」
「相変わらず静雄はきついな」


トムさんは頭をかき、困ったように微笑んでからどっこいしょと俺の隣に腰を下ろす。
こうなると俺がどんなに追い返そうとしたって彼は俺が教室に帰るまで隣にいる。
でも、俺は…





俺には教室内に友達がいない。
みんな怖がって俺に近寄って来ないから、俺は教室に帰りたいだなんて思う訳なくて。
だから必然的にトムさんを一緒にサボらせちまうことになる。



ほんとは俺だってあんたの傍にいたい。
けどあんたは俺と違って友達は沢山いるし、勉強は出来るし、普通の人間だ。
しかも俺のせいで受験生の一番大切な時期を潰させちまってる。
だから彼は俺となんて一緒にいちゃいけないんだ。

なのに、なのに

「静雄」
「っ!?」


顔をあげればトムさんの大きな手が俺の髪を乱暴に掻き混ぜる。
俺が抗議の言葉を発しようとした時それは止まって今度は首に腕を回されてぐいっと引っ張られた。


「ちょっ…トムさ」
「泣いていいから」


耳元に彼のアルトの声が響く。優しい声音に目頭がツンとする。



「俺のことなんてお前が気にしなくていいから。」



全部吐き出しちまえ、な?


そんな魔法の言葉をあんたは呟くから俺は。



「っ、うぅ…っは、」


寂しさと嬉しさ両方詰まった変な顔で泣く。
トムさんはそれでも、俺の背中をポン、ポンと叩いてくれているのだ。

その優しさにまた悲しくなって。
俺はあんたに甘えて今日を過ごすのだ。



いつのまにか空は橙に染まり、夏の日差しは少しずつ傾いている。
太陽の輝かしさはもう、失われていた。


真夏の輝き
(その美しさは、どうかそのままでいて)




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