ここだけの話


※赤林語り



おぉーっと、ごめんねぇお待たせしちゃって。
今やっとこさ青崎さんが出ていったところでね、いやあなかなかいかないからおいちゃんも正直どうしようかと思ったよ…ん?あぁ、ちょいと失礼。んぁーもしもしおいちゃんですけれども。あぁ青崎さんかい、何、さっき会ったばっかなのにもう会いた……なーに言ってんだい、おいちゃんがそんな抜け出す訳ねぇだろ?あんな仕事溜まってんのに。あーはいはい、分かってますよ…もー青崎さんは心配性だねぇ、なんだ、もしかしてそんなにおいちゃんのこと好きなの…ってあ、切れた。まったく青崎さんったら正直じゃねぇんだから…。
…え?あぁ、それなら心配ないよぉ、ちゃんと部下に押し付けてきたから。
それより君はおいちゃんに何が聞きたいんだっけね?

…………

あーそうだそうだ。四木の旦那とトム坊のね、そうそうそうだった。
あの二人は仲いい…つーかここまで聞きにくるんだから君はもう知ってるのかぁ。あー…そうそう、ラブラブのねぇ。え、そんなふうなことをする人達には見えない?そうだよねぇ、おいちゃんもそう思ったよ。インテリ常識人とインテリヤクザ。確かにどう考えてもそうは見えないねぇ。でもそれは中見てねぇからんなこと言えるんだ。
まぁ聞きなって。


…俺が二人の関係に気付いた、これはつい一ヶ月前かそこらのことかねぇ。


「赤林さん…貴方何のためにこうやって私と一緒にいると思っているんです?」
「デートでしょう」
「…いい加減にしないとその口縫い付けますよ」


まぁそんな軽口叩き合いながらおいちゃんがまぁ珍しく四木の旦那に付いて仕事してた時なんだけど…


「あ、そんなことよりほら四木の旦那。あそこに面白いもんがありますよ」
「まったく…何を言ってるんです、ただ貴方がやけに構ってる取り立ての男がいるだけ……」
「え、トム坊?平和島の兄ちゃんのことじゃなくてかい?」
「………………」


この時はびっくりしたねぇ、四木の旦那が憧れみたいので興味持ってたのは平和島の方だったからさ。まさかトム坊のこと言うとは思わなかった訳よ。でもまぁその時は特に気には留めなかったんだがね、


「あ」
「…今度はなん「四木さん!!」」


こうやってトム坊が来た時にはもう確信したね。ほら、おいちゃんこういうの察するの上手いからさぁ。
しかもこっちに走ってきたトム坊なんか四木さんの傍に来ると凄い笑顔な訳よ、これはもう間違いないって思うよねぇ。


「田中、さん」
「こんにちは、四木さん!…と、赤林」
「なんだいその対応の違い、もっと御老体は優しくしておくれよ」
「日頃の行いが悪いからでしょう」
「四木の旦那までまたそうやって…つーかトム坊、お前平和島の兄ちゃん置いといていいのかい」
「え?あれ、いねぇ。おーい静雄ー、」


トム坊がこっちこっちって手招きして近付いてきたのは、まぁ池袋にいりゃ知らぬ者無し、池袋の最強喧嘩人形こと平和島静雄。…全くトム坊も恐ろしい子だよ。平和島の兄ちゃんはあんなに俺達のこと威嚇してんのに少しも気付きやしねぇ。まぁだからトム坊なんだけどねぇ。


「静雄。この人は四木さん、でこっちは覚えなくていいけど赤林」
「えーなんか最近トム坊の扱いがぞんざいでおいちゃん泣きたくなっちまうよ」
「暑苦しいから止めてください」
「もー四木の旦那ったら相変わらずの俗に言うツンデレだねぇ」
「変なこと言わないでください。本当にその口二度と開かないようにしますよ」


そろそろ四木の旦那が怖いからおとなしく手を挙げて降参しながら平和島の兄ちゃんによろしくねぇとヘラリと笑った。そしたらほんとにそりゃあ凄い形相で睨まれちまって、もうこりゃあトム坊大分このわんころに懐かれてるなぁと思ったよ。懐かれてるってか愛されてるってか。
全く罪深い男だねぇトム坊は。俺まで一度持ってかれそうになったんだ、心を。キザだって笑うかい?笑ったっていいさ、本当のことだからねぇ。
あぁ、でも一度だよ一度。平和島の兄ちゃんは相当のめり込んでるみたいだけど、きっと四木の旦那には勝ち目がないだろうねぇ。だって、ねぇ?


「あー…あの、田中さん。昨日夜作って下さった…」
「ハンバーグっすか?」
「あ、はい。あの、今度良かったら…またウチに作りに来てください」
「ほ、本当ですかッ!?行きます、絶対行きます!!ってかハンバーグだけじゃなくて他にも御希望あればなんでも!」



あんな幸せそうに笑いながら人の頭を撫でる旦那の顔、俺は四木の旦那と長い付き合いだけどあんなの誰に対してだって見せたことないんじゃあないかなぁ。その前にあの人、人の頭なんて滅多に撫でやしないんだから。あっても茜嬢くらいだろうしねぇ。しかもハンバーグて…あんなの堅気じゃない、しかも四木の旦那が口にするなんてトム坊に会わなきゃないだろうねぇ。…まぁ分かるだろ?

「俺達に勝ち目なんてものはないねぇ」
「………」


微笑ましい二人の姿を見つめ呟けば、隣の金髪は分かってんだよそのくらい…と寂しそうに目を伏せた。あーあー、そんな顔するくらいなら早く止めちまえばいいのに。まぁ平和島の兄ちゃんがそうするんならおいちゃんには言うことなんてなにもないからねぇ。好きなようにすればいいと思うけれども。

…まぁそのあとは異常なくらいニコニコしたトム坊と不機嫌な兄ちゃんと別れた後、微妙に頬染めてる四木の旦那に詳しく問い詰めて確信に至るという訳だ。その時の旦那の顔ったらもう爆笑もんでねぇ。まさか粟楠会の幹部があんな…ククッ…失礼。


まぁそんなところだねぇ。じゃ、おいちゃんはそろそろ帰るとしようか。…ん?まだなんかあるのかい?
…あぁ、ははッそれはいけないねぇ。そこから先はトップシークレット。聞きたかったら旦那に直接聞くんだねぇ。
あぁそれと、ここで聞いたことは誰にも言っちゃあいけないよ。
もし言ったらどうなるか…分かるだろう?
…じゃあ今度こそおいちゃんはおいとまするよ。じゃあまたねぇ。


ここだけの話
(まぁその後、人が多いのをいいことに二人が手繋いで歩いてたの見ちゃったから、シークレット、も何もないんだけど)


――――――――――
ハルさん
リクエストありがとうございました!
【赤+静+四木×トム(四木トムオチ)】とのことだったのですが…これはどうなのか、四木トムっていうか赤林さんがしゃしゃり出てるよ…あ、いつでも書き直すので遠慮なく言ってください。そして応援ありがとうございます!! 更新頻度不定期ですがこれからも応援してくださると有り難いです(*´∨`*)
ハルさんに捧げます。

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