誰かはそれを運命と云った



出会いは必然的だったとか、自分達は巡り会うために生まれてきたんだとか、



そんな今にも歯痒くなりそうな台詞を呟くつもりはないけれど



「鈴木」


貴方がそうやって甘い声音で俺の名前を呟き笑うこの日常は、そんな馬鹿らしい理由づけの上にあるから存在してるのかな、って思ったりする訳で



そうしたら、やっぱりそういう夢みたいなこともあってもいいかもと、にやけてしまうのです


「道、さん」


だって愛おしくて愛おしくて、
貴方がここにいればもう何も要らないって思ってしまうくらい貴方を想っていて、
貴方の笑顔が自分だけのものであって欲しいなんて独占欲まで吐き出して、
胸が締め付け潰れるんじゃないかってくらい恋しくて、
少し離れてるだけで早く会いたい、だなんてそんな10代みたいに初々しさ丸出しの恥ずかしい恋


分かってる、こんなの女の子でもない自分がするもんじゃないし、歳相応でもないよなぁ
もっと大人な恋をするべきだ、そう思うよ俺も

だから何回も貴方を諦めようとしたし、延ばした腕を掴んで止めたことだってあったんだ

だけど、だけど
そんな我慢、貴方に触れられたらすぐどこかになくなってしまうんだ
逆にそんなことを思ってしまった自分が嫌になって、貴方の存在を確かめるかのように苦しいと言われるのも無視してこの腕で細い身体を激情に任せて掻き抱く
ギュッと強く、でも壊さないように優しく、
そしたら戸惑ってた貴方の手が俺の背中に回って、その見えない温もりさえ狂おしくて貴方を抱く腕に力がこもって


「道さん、愛してる…ッ」
「…あぁ…俺も、だ…鈴木」




だから、愛おしくて恋しくて仕方ない貴方に会えたのは、
どうか必然であって欲しい
そう思う訳です





誰かはそれを
運命と云った

(俺と貴方がこの世で出会えたことと、)
(貴方が俺を好きになってくれた、そんな奇跡みたいなことを)




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