今日もあの女は殴られたらしい。目に涙を溜めながら屋上に居た俺の所へやってきた。散々愚痴った挙句俺の飲んでいたお茶まで飲み干したこいつに、いつものことながらあきれ返る。 「10円ハゲができる」 「勝手にハゲてろ」 「…泣いてやる」 「もう泣いてんだろーが」 俺の態度が気に食わなかったのか、女の子が泣いてる時は優しく抱きしめてやるんだよ、普通。とか意味のわからないことを熱心に力説していたので軽くあしらった。はっきり言ってうざい。 「ねえ、聞いてます?」 「聞くわけねぇだろ」 「うっわ最悪だー。あのクソ女共と同じくらい最悪だー」 「知るか」 “あのクソ女共”というのは俺の事が好きな女らしい。こいつはそのクソ女共に毎日嫌がらせをされているとかいないとか。毎日こいつが一方的に話す愚痴は聞き流しているので詳しいことはしらないが。勿論俺には関係ない(と思いたい)ので手出しも口出しもしない。あいつも助けて欲しいとは言わない。 「んでさー、クソ女Aが殴ってきたから私も蹴ってやったのね。そしたらクソ女Bがなんか言ってクソ女Cが…ってホント少しくらい聞いてよ」 「…聞いてる聞いてる」 「じゃあそのイヤホンを外せ!」 あーうぜぇ。イヤホンをしているはずなのにキンキン響く女の声は俺の眠りをも妨害してくる。無理矢理イヤホンを外され不機嫌になる俺のことなどつゆ知らず、ベラベラ喋り続けるこの図太い神経をどうにかしてほしい。 「そんなに嫌なんだったら此処に来なければいいだろ」 「え?」 「俺に絡むから殴られんだろーが」 「あ、まあ、そうだよね」 なるほど。…って今更気付いたのか。馬鹿にも程があるだろ。どっかの黄色い頭の野郎と同じくらい馬鹿だ。(いや、それ以上か?)でも、と続けた女に目線は向けず耳だけ傾ける。 「でもサスケに会えなくなるより殴られる方がいい」 一瞬その言葉に驚いて横を向くとパチリと目が合った。…とんだマゾだな、と鼻で笑うとそうかもね、と満面の笑みで返された。こいつは本物のウスラトンカチだ。それでも何故か悪い気がしないっていうことだけは認めたくないが。…しょうがねぇ、見かけたら助けてやるか。10円ハゲと一緒に居るのはご免だからな。 ( 前代未聞の馬鹿げたこと ) 100213 title:XX |