夕焼け色に染まる教室。全開に開いた窓からはサッカー部や野球部の声が聞こえる。時折耳に響くバットとボールが打ち合う音と心地よい風が私の欲求を刺激する。嗚呼、寝てしまいたい。けれど私は一応数学の課題をやってこなかった罰で居残り中なので、目の前にある一枚のプリントを提出しなければならない。ここには何も私の睡魔を妨げる者は居ない。このまま眠っちゃおうか、それとも後10問くらい頑張って…


「…おい、寝てんじゃねーよ」
「ハッ」
「何だその間抜けな声。つーかプリント1枚に何分かけてんだよ」
「え、サソリ終わったの?」
「当たり前だ」


私の睡魔を妨げる者、そういえばコイツも居たんだった。眠たい目を擦りながら丸めた教科書で殴ってきた相手を見る。サソリも同じ罰を受けていたはずなのに、既に隣の席で携帯をいじっている。くそう。やっぱ脳味噌のシワの数の差なのか。


「だったら手伝いなさいよ」
「何で命令されなきゃなんねーんだよ」
「お願いします手伝って下さい」
「手伝うわけねーだろ」


この薄情者!とサソリの空欄なしのプリントを奪うと椅子を蹴られた。あれ、椅子蹴っても動かねぇ、お前相当重いんだなってお前…!女の子にそんなこと言っちゃいけません。反抗しようと思ったけど隙を見てプリントを奪い返されそうだったのでその前に写すことにした。


「今度なんか奢れよ」
「何でさ」
「見せてやってんだろ」
「それはどうかな」
「何がそれはどうかな、だ。完璧写してんじゃねーかアホ」


チッバレたか。まあ缶ジュースくらいなら奢っても構わないけれど、こいつの場合色々面倒だ。奢るなんて言った日にはコンビニのお菓子を全部買い占めるとか言い出すかもしれない。っていうか前にデイダラがそんな目にあっていたのを見て、私はサソリには奢らないと決心したのだ。


「缶ジュースでいいなら」
「ヤダ」
「ヤダじゃないわ。缶ジュース以外絶対奢らない」
「ケチな野郎だな」


そりゃアンタケチにもなるだろーよ。そう言いたい口を押さえて写し終えたプリントを返した。ふう、やっと帰れる。


「しょうがねえ…貸し1にしてやるよ」
「貸し1?」
「ああ。借りは返してもらうぜ。因みにデイダラは今んとこ貸し5だ」
「(デイダラかわいそ…)」


貸し1とかカウントされてるの怖いなあと思いつつしょうがないのでコクリと頷く。明日から私はサソリのパシリになってしまうのかもしれない。そんなことを考えつつも再び重くなってきた瞼を閉じた。もう寝てしまおう。瞼を閉じる間際にサソリの口角が微妙に上がっていたことを知りながら、私は夢の中に旅立つのだ。






(目覚めた後が楽しみだな)





100211
初夢