男だらけの暁に最近女が1人入って来た。そいつは別に強くもなく大して美しいわけでもない平凡で優しげな女だった。何でこんな奴連れて来たんだ、とリーダーに問うと「なんかちょっと幸せだろ」と意味の分からない答えが返ってきた。幸せって…いや、そういえば皆最近アイツと居ると嬉しそうだし浮かれている気もするけれど。暁ってS級犯罪者集団だろ?そんな人殺し集団に幸せなんて要るのか?っていうかあっていいのか?



「…旦那?険しい顔してどうしたんだ、うん」
「…」
「無視かよ!」
「なぁ…お前ってアイツと居ると幸せか?」



完全にオイラの言ったこと無視したな!と黄色い髷を揺らして怒るデイダラ。いいから答えろと睨むと少し首を傾げてこちらを向いた。



「アイツって誰だ…うん?」
「あの女しかいねぇだろ」
「あ、あの子か!」



ったく…それ位分かれよ。呆れ半分に遠くで飛段と喋っている女を指差した。一瞬目が合って微笑まれた気がしたが、気のせいだろう。何せアイツと俺は今まで一言も話したことがない。別に避けている訳ではないのだが、人気者のアイツはいつも色んな奴と居る為大して話すこともない俺は自然と蚊帳の外なのだ。デイダラや飛段、それに角都やイタチまでもが何時も話題にしているアイツの話を俺は只雑音混じりに聞くだけで、それ以上のことは知らない。年齢も何処の里出身なのかも、何も知らないのだ。(きっとアイツも俺のことは何も知らない)



「幸せって言えば幸せだな…うん」
「…」
「オイラ達には無縁の言葉だけどな!」
「…」
「っていうか何で行き成りそんなこと聞くんだ、うん?」
「…」
「何か言えよ旦那あ!」



…幸せか。デイダラてめぇ浮かれてんじゃねーぞ糞。デイダラの浮かれた面を見て衝動的に殴りたくなった。嗚呼、くそ。そもそも幸せって何だよ。何だか無性に苛々して無理矢理気分を変えようと目を閉じた。隣で「寝るのかよ!」と文句を言うデイダラの声が他人事のように耳を通り抜けていく。このまま本気で寝てしまおうか。瞼の裏に浮かんだ話したこともないアイツの顔がちらついた。嗚呼、くそ。幸せって何だよ。