どうも落ち着かない。 だらしなく床に寝転んでいる飛段。録画していた情熱大陸を物凄い集中力で観続けるデイダラ。窓側で眠そうに外を眺めるサソリ。何やら難しそうな本を読んでいる角都。掃除をしている鬼鮫。庭に生えてるゼツ。何もかもいつも通りなのに、どうも落ち着かない。何でだろう…。 「…落ち着かねぇな…」 「あ、やっぱり?」 「違ぇよ。お前がだ」 外を眺めるのに飽きたのか、眠そうな目を擦りながらソファに腰掛けたサソリ。さっきから何そわそわしてやがんだ、と眉を顰められた。 「それが私にもわからないんだけど」 どうも落ち着かないのよね、苦笑い気味にそう言うと大して興味もなさそうにへぇ、と相槌を打たれた。デイダラが掃除機を掛ける鬼鮫に向かってうるせぇ!と叫び、飛段が鼾を掻き始めた。 「珈琲でも淹れてこようか」 「…気がきくじゃねーか」 「まあね」 「砂糖は入れんじゃねーぞ」 はいはい、と言ってソファに沈んでいた体を起き上がらせた。最近買ったばかりの珈琲瓶の中身は既に半分程減っていた。この人数だからしょうがない。アイスカフェオレにしたかったけど、生憎冷蔵庫には牛乳なんてものは見当たらなかった。 「ただいま」 「…あ、イタチさん」 「イタチか、おかえり」 ガチャリと開いたドアから両手にビニール袋を持ったイタチが現れた。そういえばイタチは買出しに言っていたんだった。それにしてもよくその上着を着て堂々と買い物に行けたな。御馴染みの黒い上着を脱いでキッチンに入ってきたイタチにおかえり、と笑いかけた。 「イタチも珈琲飲む?」 「…嗚呼、頼む」 砂糖は多めにな、とサソリと正反対のことを言われた。見掛けによらず甘党なのはもう随分前に把握済みだ。カップに注いだ珈琲の1つに砂糖を添えた。私のカップには砂糖とミルクを1つずつ。サソリのカップには何も入れず。 「うわ、旦那達ばっかりずりー!オイラも飲みたいぞ、うん」 「牛乳ないよ?」 「オイラブラックでいい、うん」 テレビに映る情熱大陸はエンドロールが流れていた。香りのいい珈琲に気付いたデイダラが何故か全員分のカップを持って寄って来る。ブラックで本当に飲めるのかな。 「強がるんじゃねーよ。お前飲めないだろ」 「…旦那が飲めてオイラが飲めないわけがない」 「意味わかんねぇ」 鼻で笑ったサソリに反抗するデイダラ。そうしている内に全員分の珈琲は淹れ上がっていた。掃除の終わったらしい鬼鮫がやって来て、棚からクッキーを出してくれた。お前何処に隠してたんだ!と思わず言いたくなったけど、誰も気にしてないようだったので心の中に留めておいた。 「お茶にしましょう」 鬼鮫の提案に全員が頷いた。そんな提案する以前からもう既に全員テーブルを囲んで座っていた。情熱大陸が終わったテレビからは通販の宣伝が流れていた。あれ、そういえば私落ち着けたのね。さっきまでそわそわしていた気持ちは何処かに飛んでいったようだ。 「ぶへ!…やっぱブラック不味い」 「…馬鹿だろ」 「…中々の味だ。程よい甘み」 「イタチさんの程よい甘みは砂糖5つ分なんですねぇ」 ( 全員揃わないと落ち着かないのよね ) 100304 |