ひゅうひゅうと寒い風が吹いて長い髪が乱れる。頬が冷たくなったので首に巻いたマフラーに顔を半分埋めた。オイラ何でこんなことしてるんだろう。一体アイツは何時になったら来るんだ。待ち合わせの時間からもう何十分も過ぎているというのに。オイラが心の広い奴でよかったな、うん。もしオイラじゃなくてサソリの旦那だったら絶対半殺しにされてるぞ。



「あ、ごめんデイダラ。遅れちゃった」
「待たせすぎだ、うん。後1分待って来なかったら帰ってたところだぞ」
「ごめんごめん」



白い吐息を漏らせながら大股で走ってきたコイツは反省の色なんか少しも見えない程軽く謝ってきた。ムカつく。しかも少しくらいスカートの丈とか気にして走れよな、うん。それよりお前携帯繋がらねーんだけど、と睨みをきかせると、思い出したように口を開いた。



「あ、ごめん。今日家に忘れてきちゃってさ」
「馬鹿か、うん」
「デイダラには言われたくないなあ」
「やっぱオイラ帰る」
「ちょ、ごめん冗談だってば!」



成績オール2のお前に言われたくねーよ。腕にしがみ付いてきたコイツの頭を軽く叩くとパコンといい音がした。やっぱ脳味噌入ってねーんじゃねぇのか、うん。



「で、いいものって何だよ、うん」
「そうだったそうだった!ついて来て!」



オイラの冷えた手が幾分か温かいコイツの手に掴まれる。なんだこの力。こいつ本当に女なのか?ぐいぐい引っ張る女とは思えない握力に少し噴出してしまった。っていうか何処に連れてくつもりだ、うん。昨夜「いいもの見つけたから明日の放課後は空けといてね!」と半ば一方的に電話を切られ、それから連絡は一切なしで何のことだか検討もつかない。コイツの行動は行き成り過ぎる。こっちの都合もちゃんと考えて欲しい。(まあ結果的に暇なんだけどな、うん)暫く走り続けると人の気配のない小さな公園に着いた。…なんか、気味の悪いところだな、うん。



「…此処に何か、」
「あ、いた!」
「は」



突然繋いだ手が離れたかと思うとベンチの下を覗いて大声を上げたコイツ。…オイラ達以外誰も居ないからってそんなに股を開くな。っていうかさっきからオイラ、スカートの丈とか股とか変態っぽいな、うん。



「出ておいでよー…」
「さっきから何やってんだよ、うん」
「此処に猫が居るんだけど、中々出てきてくれないんだよね」
「猫?」



同じようにしゃがみこんでベンチの下を覗いてみると、暗闇の中に2つのビー玉が見えた。…いいものってコレか、うん?猫がいいものって…。呆れ半分に溜息を吐くが無神経なコイツは気付いていなかった。…。



「ちょっと退け、うん」
「え、何するのデイダラ…は!もしかして虐待する気じゃ!」
「んなわけあるか!猫が怖がってんだろーが、うん」



なるほど!と両手を合わせたコイツはやっぱりオール2だな、と思った。猫に向き直り、チッチッチと舌を鳴らして手招きする。徐々に近づいてきた猫を撫でてやるとゴロゴロと舌を鳴らして擦り寄ってきた。やっぱ怖かったんだな、うん。



「どうだオイラの力。すげーだろ、うん…?」



猫を抱いて得意げに見せてみると、アイツの顔が赤くなっていることに気がついた。どうしたんだ、うん?調子でも悪くなったのかと思って大丈夫か?と問いかけると更に赤みが増した気がした。



「なななんでもないよ!ちょっとドキっとしただけで」
「…ドキ?」
「いや、あの!別に猫が羨ましいとか思ったわけじゃなくて!」



…何言ってるんだコイツ、うん。っていうか思いっきり羨ましいって言ってんじゃねぇか。あからさまな反応に又もや大きく噴出してしまった。そんなオイラを見て面白くなさそうな顔をしたので手招きで、来いよと言ってみると隣にしゃがみこんできた。おい、スカートの中見えるぞ、うん。



「デイダラにこんな特技があるなんて知らなかった」
「特技?」
「猫を手懐けるっていう」
「…」



それって特技に入るのか、うん?そう聞けば即答で入るよと答えられた。入るのか、うん。特技は芸術的なことがよかったんだけど。でもまあいいか。お前も手懐けられたしな、うん。あ、ちょっと気障ったらしかったか?と冗談交じりに言ってみると今度は耳まで真っ赤になっていたので本日3度目の笑い声を上げた。













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