「お久しぶりです」


目の前に居るニコニコした顔色の悪い青年が私を見ながらそう言った。…え、この人何処かで会ったことあるっけ?どうしよう全然思い出せない。こんなにかっこいい人なら絶対覚えているはずなんだけどな。あれ、誰だっけ。名前の最初の文字すら思い出せない。


「…もしかして覚えてないんですか?」
「え、あ、いやぁ…そういうわけじゃないんだけど…」


シュンと眉を垂らせた青年に、思わず言葉を濁してしまった。どうしよう。白い肌に黒い髪にヘソ出しで爽やかな笑顔…さっぱり思い出せない。どことなくサスケ君に似ている気がするけど、チャクラも違うし何よりサスケ君はこんなに笑顔を晒すような子じゃなかったと思う。…もしかしてサスケ君の兄弟とか?いやいやいや、サスケ君にはお兄さんが一人居るって聞いたけど、今は抜け忍であの暁の一人らしいし。


「やっぱり覚えてないですよね…」
「…いや、」
「あんなに仲良くして頂いたのに」


…誰!君ホント誰だっけ!?仲良くして頂いたって…それじゃ覚えてない方がおかしいよね。めちゃめちゃ失礼だよね私。一生懸命普段あまり使わない脳をフル活動させても全然思い出せない。もしかして私ってば一部記憶喪失だったりしないかな。医者行こうかな。


「…ごめん、私記憶喪失みたいだから」
「はい?」
「ちょっと医者行って来る」
「え、あの」
「ごめんね!すぐ戻るから名前聞いてもいい?」


パチクリ、と細めていた目を開いて驚いている様子の青年。え、何。何かおかしいこと言ったか私。


「サイです」
「?…あ、あぁサイ君ね。わかった」
「…あの、最後に1つだけ言ってもいいですか?」
「ん?何?」



「全部嘘です。初めまして」







騙されました。





100213
題:パッツン少女