今日は精神的にも肉体的にも疲れた日だったな。やっと挨拶回りから帰ってきた私は片付け終わったばかりの部屋のソファに腰掛けた。これからちゃんと暮らしていけるのかな。半魚人と一緒のアパートだなんて物凄く不安…っていうか気持ち悪い。数時間前に会った鬼鮫さんの顔を思い出して頭を抱えた。そういえばイタチさんが「今日は刺身だな」とか言って鬼鮫さんの首絞めてたな。大丈夫だろうか。


ピンポーン


ん?お客さん?突然静かな部屋に音が響いたので肩が上がってしまった。引っ越したばっかりなのに客人とか…なんか怖いな。あ、もしかしたらデイとかかも。妙な緊張感を秘めつつも、急いで玄関に向かった。レンズを覗き込むと銀髪オールバックの人が立っている。…誰。


ガチャ
「…はい」
「お、やっと出たか!」
「えっと…貴方は、」
「飛段だぜェ!」
「飛段…」


何処かで聞いたことあるような…って隣の人じゃんか。日中居なかった女遊びの激しい(角都さん談)飛段さんじゃないか。慌てて挨拶するとニカッと笑っていた。なんだ、想像よりもチャラチャラしていないじゃないか。それに何よりイケメンだ。服の露出度高いけど。


「お前、何か宗教に入ってるか?」
「え、宗教?…家は先祖代々の仏教ですけど」


何この人。いきなり宗教聞いてきたよ。しかも私の返答を聞いて「仏教?なんだそれ」とか言っている。いやいや日本人の半分は仏教だぞ。仏教を知らずに人に宗教を聞いてくるなんて面白い人だ。


「そんな古いもんやめてジャシン教になれよ」
「ジャシン?」
「ジャシン様こそ時代の最先端を行く最高のお方だぜェ!」


ジャシン様って誰。ジャシン教って何。目を輝かせてジャシン様がどーのこーのと語っている飛段さん。そんなの聞いたこともない。仏教とジャシン教だったら断然仏教の方が馴染みあると思うよ。


「ジャシン教に入っとけばお得だぜ」
「何がお得なんですか?」
「もれなくカエルのホルマリン漬けが貰える」
「丁寧にお断りします」


そんな気持ちの悪い宗教に入れるか!カエルのホルマリン漬けなんか貰って嬉しいと思える人は果たして居るのだろうか。しかもそれ全然お得じゃないし。即答した私になんでだよ!と声を上げる飛段さんのことが色々と心配だ。


ガチャ
「うるせーな。何かあったのか、うん?」
「あ、デイ」
「あ、デイダラちゃん!聞いてくれよ、コイツがジャシン教に入らないって」
「飛段かよ。いや、普通入らないだろ、うん」


目を擦りながら上下スウェットで現れたデイ。絶対寝てたな。睡眠妨害だったか、と少し反省した。飛段さんはというと、今度はデイをジャシン教に誘い始めたみたいだ。…今の内に逃げよう。デイには悪いと思ったけれどそろそろ私も眠くなってきたのでこっそりとドアを閉めた。