▼ そういや…
「んん…、」
ゆっくりと意識が浮上する。
目を覚ますとそこは真っ白い空間だった。
…ああ、そうか。
おれ、死んだのか。
『愛してくれて…………ありがとう!!!』
…せっかく、オヤジ達が助けに来てくれたのに。
弟が命を懸けて駆けつけてくれたのに。
自分が安い挑発に乗ったせいで…、
「…ごめんな、皆。」
ポツリと呟いた言葉は誰にも届かないだろうと思うけど、言わずにはいられない。
でも最期に感謝の気持ちを伝えることができて良かった。
ルフィに伝えることができて良かった。
最期がルフィの腕の中で良かった。
「………、」
そういえばここがあの世ならサボに会えるんじゃねェか?
サボにルフィのことたくさん、たくさん話してやりたい。
ダダン達やジジイのことも。
「ふ…、っ…」
そうだ、サッチはどこだろう。
あいつには申し訳ないことをした。
ティーチはおれの隊の奴だから、きちんとケジメを、
…ちくしょう、もうダメだ。
「う、っ…ひっく、う、うあああ…」
ボロボロ、ボロボロ。
ダムが決壊したかのように溢れてくる。
もっと生きたかった。
皆と冒険し続けたかった。
いろんなものを見て、いろんなものを食って、いろんなものを飲んで。
オヤジの息子であり続けたかった。
「ごめん…ごめんな、ルフィ……、ごめんなァ…」
ルフィ。
大切な大切な弟。
出来が悪くて、弱虫で泣き虫で。
そのくせ無茶ばっかりして心配かけて。
そんなお前を残して死んだのが、苦しくて申し訳なくて。
お前の夢の果てを見たかった。
お前と戦ってみたかった。
こんな、こんな形で別れるなんて…
「エース。」
ふわっと、なにかに包まれた。
温かくて、優しい。
「エース、私よ。」
「…お、おふくろ?」
おれを包む女はよく見ると、おれと同じでそばかすがあった。
おふくろ、という言葉ににっこりと笑った。
「そうよ、よく分かったわね。」
「おふくろ…なのか?」
「会いたかったわ…エース。」
再びぎゅ、と優しく抱き締められる。
おれよりもだいぶ身長が小さいおふくろは、おれの胸辺りまでしかない。
しかも細くて少し強く抱き締めたら、腰がポッキリと折れてしまいそうだ。
「エース。」
おふくろがおれの涙を拭いながら優しく呼んだ。
「そんなに泣かないで、私のエース。」
「……………。」
「あなたには笑顔が似合うわ、あの人のように。」
あの人、とはあの海賊王のことか。
おれの、父親の。
「あなたは今まで本当によく頑張ったわ。」
「おふくろ…」
「皆に愛されたのね、愛を知って育ってくれて…本当に良かった。」
そう言って微笑むと、おれの手をきゅっ、と握り締めた。
「ほらエース、行きましょう。」
「?何処に行くんだ?」
「ふふふ。」
軽くスキップしながらおふくろはおれを引っ張っていく。
その先には…、
「…!!」
「お待たせ、ロジャー。」
胡坐をかいて、背を向けて。
けれどその背中は確かにあの男のもので。
「…遅かったな、ルージュ。」
そいつはゆっくりと振り向き、そう言った。
貫禄のある雰囲気、重みのある低い声。
これが、海賊王。
この人が…おれの父親。
「あー…初めまして、だな。エース。」
「…気持ち悪ィこと言うんじゃねェよ。」
「がっはっは、さすが俺の息子、俺そっくりだな!」
豪快に笑う奴は、世間で言う程の野郎に見えなくて。
…ジジイみたいな、奴だと思った。
「……………おい、親父。」
「!!」
「それから、おふくろ。」
「なあに?」
最初はロジャーが憎くて憎くて仕方なかった。
なんでおれがあんたのガキなんだ、って。
おふくろには感謝していたけど、ロジャーには全く。
生まれた意味も、生きてる意味も全く分からなくて。
でも、今は。
あんたが父親で、良かったと…少し思っていたりする。
なんだかんだでおれがここまで生きてきたのは…あんたの存在があってこそ、だから。
「………ありが、とう。」
それを告げると、2人は満面の笑みを見せてくれた。
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エースはぴば!!
家族3人で、お幸せにネ!
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2015/01/02 (16:06)