理事長室に呼ばれた三人が扉を開けて最初に見たものは、閉められたカーテンから漏れる僅かな光と、その窓の前に立つ髪の長い女性の姿だった。 「わざわざすまなかったね」 未だ後ろを向くその人物の右横から声をかけたのは、雷門中理事長の雷門総一郎だった。その隣には雷門夏未も見える。いきなりの顔ぶれに、円堂は少したじろいだ。 「あの…何で俺達ここに呼ばれたんですか?」 「そのことだが…」 「心当たりがないとは言わせないわよ」 円堂の質問に理事長が答えかけたその時、今までずっと後ろを向いていた女性の凛とした声が響いた。そして円堂たちに振り返り、長い黒髪がさらりと揺れる。それがやけにゆっくりに見えた。 「私は本日付けであなた達の『監督』になった吉良瞳子です。あなた達の力を開花させ、エイリアに対抗できるように指導するために来たの。あなた達、3日前の事は覚えているわね?」 涼やかな眼差しに射抜かれ、三人は一瞬固まる。そして次の瞬間、「えぇっ!?」という三人分の驚愕の声が部屋中に木霊した。 「え、えっ…どういう」 「あなたたちに起こった事は全て理事長と雷門夏未さんから聞いています。あなたたちが持っているそれが紛れも無い『力』の証拠。それを目覚めさせ、エイリアと名乗る宇宙人を倒すのがあなたたちに課せられた役目よ」 「漫画かよ!」 円堂はその突拍子もない話の内容にコケた様に叫んだ。あまりにも非現実的な話だ。豪炎寺も風丸も、各々で呆れたような表情をしている。 「でも3日前に起こった事は事実でしょう。あなたたちがそのバッジを手にしたのも、エイリアが襲来したのも事実。現実を見つめないで逃げることは、可能性を自ら潰しているのと同じだわ」 「それはそうだけど…」 「正直な事を言うとね、エイリアは特殊な力を持っているから普通の機関では手に負えないのよ。彼らに対抗するには同じような力で戦うしかないの」 「…もしかして」 嫌な汗が首筋を伝わる。円堂は疑惑と不安と呆れがないまぜになった目で瞳子を見つめた。 「その通り。あなたたちはエイリアに対抗し得る特殊能力――『超次元蹴球魔法』の使い手に選ばれたのよ」 今度こそ開いた口が塞がらない三人に、無情にも「口答えは許さないわよ」という氷のような声が突き刺さったのだった。 |