魔法少女 | ナノ

「ねえレーゼ。初恋は実らないって本当?」
「……」
「色んな占いやろうとしたけど、俺円堂くんのプロフィール知らないし…唯一できる花占いは必ず悪い結果になるから、最後の一枚になる前に全部ちぎってるんだけど」

エイリア三強の一人、グランに呼ばれて玉座の間に赴けば、そこに待っていたのは最近殊に溜め息ばかりついているグランと、その両脇から呆れた視線を飛ばすバーンとガゼルの姿だった。直々に会話することさえ滅多にないので、一体何事かと思えばこれだ。レーゼはどこか抜けた上司にばれないように小さく溜め息をつき、膝を折ったまま返答に困っていた。

「何か良い方法ない?」
「…申し訳ありませんグラン様、私は存じ上げません」
「全く…だからいつまで経っても抹茶ソフトの魔法使いなんだよ」
初めから期待などしていなかったかのように頬杖をつき、グランは脚を組み直した。理不尽すぎる言葉に立場上何も言い返せないまま奥歯をギリ、と噛むと、黙ったままだったバーンが珍しく助け舟を出す。

「真面目に構うなよ、レーゼ。ほっとけほっとけ」
「色恋沙汰などに現を抜かしているから、計画が鈍行になるのだ」
「二人とも酷いよ!だってあれは運命だったんだ…家庭に入るのに身体傷付けちゃ駄目だろう?」
「よし、貴様は今から私の絶対零度の闇で頭を冷やすがいい」

突っ込み所満載な三人の、まるで漫才のような会話を右から左へと流しながら、レーゼは胸中でチームメイトたちともう一人の上司に助けを求める。やがて3トップのショートコントが終わり、バーンが小さく息を吐いて告げた。

「あっちは戦力を集めてきてる。早々に片付けないと面倒になるぜ」
「今何者かとぶつかっているようだが、こちらの者ではないようだ。近々奴らの新たな戦力になる可能性が高い」
「はい。準備が整い次第、すぐに向かいます」
ようやく真面目な仕事の話題に切り替わった事に安心を覚え、レーゼは頭上から降り注ぐ二つの声に短く簡潔に返事をした。するとグランがその場を取りまとめるかのように、爽やかな声で笑顔を浮かべながら言う。

「まあそういう事だからさ。ついでに円堂くんの個人データと印鑑盗って来て」
「は、はあ」
「こいつロクな事に使わねえからいちいち真に受けるなよ。昨日茶色の縁の紙チラつかせてたからな」
「婚姻届か。とうとう詐欺の世界にその両翼を浸す気かグラン」
「お前はその喋り方どうにかしろよガゼル」

再び始まってしまった漫才をBGMに、レーゼは今後の組織の未来を僅かに案じたのだった。