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リンリンハイ



トレーニングルームの機器たちは今はその音を止めている。それぞれが休憩時間を自由に使っているためだ。マシンのかわりに今は明るい話し声が部屋を埋めている。
シュテルンビルトを守るヒーローたちも、ここではいつもより素の表情が出るものだ。ライバル同士であるが、同時に友人と言っても差し支えないほどには仲の良い面々同士では、些細な会話も笑顔に変わる。

他のメンバーたちと同様に、ドラゴンキッドことホァン・パオリンも休憩に入り、額にうっすら浮かんだ汗をタオルで拭っていた。
そこでふと視界に入ったのは、こちらに背を向けてテーブルで何か作業をしているイワンの背中だった。普段はあまり話さないが、彼が休憩時間を使ってまで熱中するものに少し興味を引かれた。

「何してるの?」

後ろから、その背中に声をかける。すると作業に集中してパオリンに気付かなかったのか、急に降ってきた声にイワンは大袈裟に驚き、膝を勢いよくテーブルにぶつけた。裏返った短い悲鳴と共に鈍い音が響く。
打ち付けた膝を抱えて悶絶する彼に、パオリンもまた困ったような苦笑いで「…大丈夫?」と声をかけた。

「…す、すみません…」
「いや、多分それこっちの言葉……あ、」
痛みと闘っているイワンのぶつけた、そのテーブルの上。色とりどり、模様も様々なそれにパオリンは目を輝かせた。

「わあ…綺麗だね!これニホンの遊びだよね?折り紙?」
「あ…はい、昨日買って…なんだか止められなくなっちゃって」
「へぇー、すごいなあ…紙なのにこんな風になるんだ」

テーブルの上に乗っていたのは、イワンのヒーロー名でもある折り紙だった。大の日本好きな彼は、よく穴場で安く質のいい品物を見付けては手に入れている。これもその類だろうとパオリンは理解した。
休憩中ですら作業を惜しまない熱の入れように比例するかのように、色とりどりのそれらは丁寧に作り上げられていた。

「ねえねえ、ボクにもできるかな、それ」
「鶴…ですか?そうですね、多分、割と簡単な方だと思うんですけど…」
「ほんと!?教えて教えて」

パオリンの勢いに多少たじろぎながらも、彼女の爛々と輝く大きな瞳に思わず笑みが零れた。
「鶴、気に入りました?」
「うん、すっごくカッコイイね!」



「うーん…中々綺麗にできないなあ」
「そんな事ないですよ、初めてにしてはとても上手だと思います」
「そっかなあ…あ、紙もう無いね…」

パオリンの手から生み出された数羽の折り鶴たちは、イワンのものより少しだけ歪な形をしていた。嘴の部分が苦手らしく、うんうんと唸りながら新しい紙に手を伸ばしていたら、最後の一枚を使い切ってしまったようだ。

「何か、ごめんね」
「あ、あの…気にしないで下さい、僕こういうの誰かとした事ないから、…楽しかったです。良ければ、また」
「やあ二人共!何してるんだい?」

突如イワンの言葉を遮った爽やかな声は、顔を見ずとも分かる、あのキングオブヒーローのものだ。
二人が振り返ると、彼――キースは、その先のテーブルに鎮座するたくさんの折り鶴に目をやった。

「スカイハイさ…」
「おお!美しい、そして綺麗だ!これは君たちが作ったのかい?」
「そうだよ!折紙さんと一緒に!」

自分たちより年上なのに、まるで子供のようにはしゃぐ彼を見て、イワンは何となく大型犬を思い浮かべてしまった。すぐさま物凄い申し訳なさで頭がいっぱいになってぶんぶんと頭を振ったが。そんなイワンを置いて会話は弾む。

「これは鳥かい?」
「鶴っていうんだよ。ね、折紙さん」
「はっ、はい!」
「成る程。それで、このツルたちは飛ばないのかい?鳥なんだろう」

キースの何気ない一言に、そういえば、とパオリンが呟く。するとイワンは申し訳なさそうに「…飛べないんです」と俯いて目を逸らしてしまった。
その姿を見てキースはふむ、と少し考える仕草をして、そしてにっこりと二人に笑顔を向けた。

「飛べないなら、こうすれば良いさ!」

キースを青い光が包み、テーブルの周りを風が渦巻く。たくさんの折り鶴は、彼の起こした風に乗ってふわりと舞い上がった。

「わあ、すごいすごい!飛んでる!」
「う、わ…!」

まるで風の中を泳ぐように飛ぶ鶴を見て、二人が感嘆の声を上げる。
そんな三人組を遠くから見つめる、まるで保護者のような表情の大人たちに、バーナビーもまた満更でもない様子で肩をすくめたのだった。



 ̄ ̄ ̄ ̄
n番煎じですがこの三人マジ天使

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