小説―稲妻 | ナノ

晴矢視点
もしもの話
ゲーム+アニメ÷2

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エイリア学園という組織が解体されてから数日経つ。今となってはチームメイトと言えなくなってしまった元プロミネンスのメンバー達は、それぞれが新しい環境で新しい生活を送っている。与えられた二つ目の名前を捨て、本当の名前で生きることを許されたのだ。それはかつてのグランが統率していたガイアの奴らにも言える事で、それぞれがお日さま園に来る前の、本当に子供だった時からやり直したいと考えているそうだ。

グラン――ヒロトはそれを嬉しく思う半面、寂しいとも言っていた。今まで数々の苦難を共に乗り越えてきた言わば『家族』がいきなりバラバラになるのだ。表面では笑顔で送り出せたとしても、心の奥深く、それこそ自分ですら知り及ばない部分では行くな、行くなともがいていたに違いない。
ガイアというチームは、他のチームとは雰囲気を異にしていた。上下をあまり気にしない、それこそ本物の家族のようなチームだった。だからこそ、その家族の一員であるヒロトは、自分の中の複雑な光と陰の間でチームメイトを想い苦悩した上で、彼らにとっての最善の道を選んだのだろう。基山ヒロトとは、そういう奴だ。

俺はヒロトとは違った。
あいつらの未来を想像出来なかった。過去を振り返り、今を駆け抜けるようにして生きていた。ある種の懐古主義だったのかもしれない。俺にとって今を生きる手だては勝つ事で、その為には共に戦ってくれる戦友が必要だった。戦いとはつまり団体で行うもので、それがバラバラになった時が己の死だと心得ていた。

だから今更自由を与えられたところで、戦いを放棄する術を持たない俺は情けない程に迷ってしまったのだ。気付くのが遅すぎた俺が馬鹿だった。あいつらは戦うために生きていた訳じゃない、幸せになるために生きていたのだ。