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――なあ、見てくれ。今日はとてもよく晴れた日だ。風も少し吹いてる。もうすぐ秋が来るんだ。

不思議だよ。こんな状態になって、今まで見えなかったものが今じゃとてもはっきり見えるようになったんだ。
変だな。毎日をただ過ごしていると、目の前のことばかり気にして地面ばかり見つめて、こんなにきれいな空の青さすら見逃して過ごしてしまっているんだ。
でも未来を考える必要がなくなったからこそ、こんなにきれいなたくさんのものを思い出すことができた。それがただ、すごく嬉しいんだ。きっとそれはすごく尊いことで、だから今この時も大切にしたいと思える。決して今が間違っているだなんて思わないさ。

だけど、××。友達として、俺のわがままを聞いてくれないか。
お前はきっとこの先悲しむだろう、途方もなく長い間、ずっと。自惚れかもしれないけど、そうだろう?俺はお前がそんな風にこれからずっと苦しんで生きていかなきゃならないのが嫌なんだ。俺に縛られていては、きっとこれから知ることのできる綺麗な景色も、音も、それから大切な人たちだって――見逃してしまうかもしれないだろう?

だから、これは俺のわがままだと思って聞いてくれ。一生かけてのわがままだと思って、どうか聞いてくれ。

次にお前が起きた時に、こんな風に綺麗な景色を見られるように。
――ここでもう、さよならしよう。



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