稲妻2 | ナノ

「風介が見付かったんだって」
開口一番ヒロトが呟いた名前は、今となっては懐かしささえ覚える名だった。その知らせを誰から聞いたと問えば、ヒロトの姉だそうだ。吉良財閥の娘なだけあって、その人脈は計り知れない。あの人は昔から冷静だったから、任せて損はないと思っていた。

「どこに居た…いや、そんな事は別に構わねえ。あいつ、今何処にいる」
「姉さんが、警察の人と一緒に風介連れてこっちに向かってるみたい。発見場所が近かったから、多分すぐ着くだろうって」

淡々と、しかし懐かしさを帯びた声でヒロトは言った。
涼野風介。かつてガゼルと呼ばれ、俺たちと肩を並べて頂点を競い合った男は、既にエイリア学園から追放されていた。小手調べ感覚でつついた雷門の奴らに引き分け、マスターランクの名を傷付けたとして、チーム自体がずっと前に消されたのだ。風介を除く他のダイヤモンドダストの奴らは、既に全員保護されていた。しかしそのキャプテンであった風介だけが、ずっと行方知れずのままだったのだ。
その風介が見付かったということは。

「久しぶりに、三人が揃うって訳か」
エイリアの戦士であった頃は随分と張り合ったものだが、そのわだかまりが解けた今考えると、この再会は結構良いことなんじゃ、と思う。元々はただの子供だった俺たちは、あの計画すら無ければ上手くやっていけた筈なのだから。そう思うと胸がこそばゆくなって、隠すために他愛ない事を口にする。

「あいつどんな顔すっかな。今更会いたくもないってキレるかも。…あーでも来てるんだからそれは無えか」
「…その事だけどさ、」
ヒロトが俺の戯事をしっかり聞いた上で、視線を落として言う。僅かに沈んだ音色は耳に深く浸透した。

「風介、記憶が無いんだって」