稲妻2 | ナノ




うだるような熱さを、残暑とは思えないような8月の下旬。合唱を続ける蝉たちは、これが最後のチャンスとばかりに声を張り上げていた。

鉄塔広場は、この町からとんと姿を消してしまった木々が残る、数少ない場所のひとつだ。
ずっと遠い昔からこの町を見下ろしているこの場所が、カノンは大好きだった。よくこの場所に来ては、光を目一杯抱く町並みを見下ろす。曾祖父の円堂守がそうであったように、カノンにとってもここは特別な場所なのだ。


王牙学園の事件から、3ヶ月あまりが経っていた。

あの事件は本来、一部関係者らの内で極秘裏に処理されるべきもののはずだった。
しかし、計画を発案したヒビキ提督に反対意見を持つ者たち――所謂反ヒビキとも言うべき者たちの中に、政府に精通する者がいたのだ。軍部とは違った意味で革命的な考えを持った彼らは、この事件を皮切りに社会システムの改変を始めようとしていた。もちろん、正攻法でだ。

法を無視したタイムワープ技術の行使は、それだけでこの時代では立派な犯罪だ。
政府内部の綱紀粛正がなされ、軍部への監視が強まった。大きな変化は見られないが、細かな部分では明るい方向に道が拓けてきている。


オペレーション・サンダーブレイクに関わった彼ら――チーム・オーガの処分も、その影響下に置かれていた。




うつせみのみるゆめ



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