今日は暑いなぁーなんて思いながら天を仰ぐ。
いやはやホントに暑い。
ハゲちゃうくらいに暑いよ。
ほら、聞こえるだろ毛根たちの悲鳴が。
うふふ。
と、まぁ、私が軽く現実逃避しているのには理由がある。
目に前にいる人物、泉孝介がやたら真面目な顔をしているからであって。
その顔から紡ぎだされた言葉が原因である。
「冴木のことが好きだ。」
と言われたのが数分前。
その時の私はアホみたくポカンと口を開けて泉を凝視した。
だってねぇ。
そんなこと言われるとか思ってもないじゃない。
私は野球部のマネージャーだからそれ関係の用事で呼び出されたって思うじゃない。
で、現在に至るわけだけどホントに暑い。
これは本格的に地球温暖化について考えなくちゃいけないな。
うん。
「冴木オレの話聞こえたのか?」
という泉の言葉で現実に引き戻された。
「え、あぁ、うん。なんだっけ?」
「お前のことが好きだっつってんの。」
「あぁ!!」
私はポンと手を叩いた。
「ホント、なんでこんな奴好きになったんだろ。」
「それ、私が1番言いたいこと。」
だってねぇ、私、可愛くなんかないし、がさつだし、胸なんかまな板だし。
性格がいいなんてお世辞にも言えないし。
いいところなんかないのにねぇ。
「あ、泉もしかしてこの暑さで頭おかしくなっちゃったんじゃないの?」
「オレは正常だ!!」
「怒鳴らなくったっていーじゃん。」
だって信じられないじゃないか。
噂じゃモテモテの泉が私に告白するなんてさ。
おかしいもんさ。
「あ、じゃあ冗談か。」
「あのさぁ、さっきっからなんで認めねぇの?」
「何を?」
「オレが冴木を好きだってこと。」
認めないもなにも、信じられないし。
てか、千代に仕事まかせっきりだ。
ヤバいヤバい。
早く戻らなくては。
「あ、私そろそろマネジの仕事しなきゃなんで。戻ります。
そう言ってくるっと泉に背中を向けたらグイッと腕をひかれて私はバランスを崩した。
そんな私を後ろから支えるのはもちろん泉だ。
「あー、えっと、ありがとう?」
主犯に対してお礼を言うのはどうなのかと思い語尾が疑問形になってしまった。
さて、そろそろドリンクを作りに行こうか!
そう思い1歩踏み出そうとした瞬間、ギュッと抱きすくめられてしまった。
えぇ―!!
泉は私の首筋に顔をうずめた。
やわやわと当たる泉の髪がくすぐったい。
そして、泉は聞いたこともない声で囁いた。
「なんで信じてくんねぇ―の?」
「いやーえーと、ね、今は野球の方が大事じゃん?」
早くこの場から逃げたい。
こんなの泉じゃない!!
いや、泉なんだけども!!
私の知ってる泉じゃない!!
声が妙に色っぽいというかなんというか。
"男" の泉が垣間見えて何だか心臓がうるさい。
「お前が信じてくれねーと練習にも身が入らないっつーの。だから、」





「信じろよ。」





耳元で囁かれたその言葉は私の体を駆け巡った。
ざわざわっと体がうずく。
「なぁ、なんか答えろよ。」
あぁ、もう駄目だって!!
「ひゃっ!!」
耳を軽く甘噛みされた。
なにこれなにこれ!!
おかしいよ!!
泉の腕に力がこもる。
「信じて。」
あぁ!!
もうっ!!
私はきゅっと目を閉じた。
この心臓の早鐘がウソでないのなら。
この熱がウソでないのなら。
私はきっと泉のことが………
「なぁ。」
ひぃぃぃぃいいいい!!!
「冴木、好きだ。」
おかしくなりそうです!!
「わ、たしも……」
私は消え入りそうな声で呟いた。











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回遊魚


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