「けっ………。」
帰り道、後方から何かを吐き捨てるような声が聞こえた。
「どうした壱?」
「今日の新入生見た!?」
「あ、あぁ。」
「河合せんぱぁ〜い、だって!!語尾にハートなんか付けやがって。」
「はぁ。」
「あの子、絶対に和己に気があるよー。」
険しい顔をしながら壱が言った。
「そんなことないだろ。」
「和己はもう少し自分が持てることを自覚した方がいいよ。」
なんて言って軽く睨まれた。
「今日、一緒にドリンク作ってた時さぁ、河合先輩って彼女いるんですかねぇ〜?壱先輩知ってます?なんて聞かれたんだよ!?ぶりぶりすんじゃねぇーっての。」
「で、壱はなんて答えたんだ?」
「私と付き合ってるけど?って言った。」
あ、なんか嬉しい。
にやける口元を押さえながらまだ何か言いたそうな壱に耳を傾ける。
「そしたらさぁ、なんて言ったと思う!?」
そう聞いてくる壱に俺は首をかしげて見せた。
「えー、壱先輩なんかとお付き合いしてるんですか―!?だって!!ひどくない!?」
「それ、ホントにその子が言ったのか?」
「もち!!疑うんならその場に準太がいたから確認してもいいよ!!」
「落ち着けって。」
そんな奴が入ってきたのか。
マネージャー達はこれから大変になるな。
なんて、先のことを考えてたら、はぁ、とため息が聞こえた。
「今度はなんだ?」
「なんかさぁ、その子の言った"壱先輩なんか"ってゆーのがさぁひっかかってさぁ……。」
「うん?」
「ホントに私なんかが和己の彼女でいいのかって思っちゃってさぁ。」
そこで壱は区切って、またため息をついた。
「私、がさつだしさ、男勝りだし、可愛くないし、いいとこないなぁって思っちゃったんだよ。」
さっきの威勢はどこへやら、壱はしおらしくなってしまった。
そんな壱の手を握った。
「壱、オレから告白したってこと忘れてないか?」
「ん?」
「オレは、壱の一生懸命なとことか、曲がったことが嫌いなとことか、意外と泣き虫なとことか、笑顔が可愛いとことか、そういうとこ全部ひっくるめて好きになったんだけど。」
握る手に力を込める。
「和己、痛いって。」
「次、自分でいいのかとか言ったら許さないからな。」
「はい。」





「オレは壱じゃなきゃイヤなんだから。」





そう言って力を緩める。
「和己、」
「ん?」
「大好き。」
壱が寄り添ってきた。





Lover





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回遊魚


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