今日は彼女である冴木が家に来る。
が、残念なことに家族は全員居る。
ホントに残念。
「花井って妹いるんだよね。」
マンションの階段をのぼりながら冴木が聞いてくる。
「おぉ。」
「いいなぁ。羨ましい。」
「お前んち兄貴だっけ?」
「そ。しかも双子。無駄に息合ってるから腹立つときあんのよね。」
「ふーん。オレは兄貴欲しかったけどな。」
そんな会話をしていると家の前についた。
ガチャガチャと鍵を開けて扉を開ける。
「ただいまぁ。」
そう言って一歩玄関に入ると、
「おかえりー。」
パタパタと足音を立てて妹二人が駆け寄ってきた。
「母さんと父さんは?」
「父母会で飲み会だって。」
「ねぇ、後ろの人がお兄ちゃんの彼女?」
「おぉ。」
「お兄ちゃんにはもったいないくらいの美人さんだね。」
「ねー。」
「お、お前ら……。」
ん?
制服の裾を冴木が軽く引っ張ってる。
「どうした?」
「花井の妹?」
「おぉ。」
そう答えたら冴木の顔がパァァァアアっと明るくなった。
「うっそぉ!?似てない!!可愛い!!やぁー!!花井にはもったいない!!」
「もったいないってどうゆーことだよ!!」
「えーいいなぁ……可愛い。お名前は?」
「飛鳥です。」
「遥です。」
「名前もかわいー。私は冴木壱って言います。」
冴木はぺこりとお辞儀してまたかわいーだのなんだのきゃいきゃいしだした。
オレのことは眼中にないみたいだ。
オレは冴木の腕を掴んで無理やり家に上がらせた。
「ちょ、花井?」
いきなりのオレの行動に冴木はかなり驚いているみたいだ。
「お茶とかいらねぇーからな。」
オレは妹たちにそれだけ言うと冴木を自室に連れて行った。
扉を閉めてから遠くの方で壱さんに変なことしちゃダメだよーなんて声が聞こえた。
「あーあ、もっと話してたかったのにぃ。」
なんて言って冴木はむくれた。
「知るか。」
「あ、もしかして花井、拗ねてんの?」
「はぁ!?」
「自分そっちのけで私が妹ちゃんたちと話してたから拗ねてんでしょ。」
「なっ……!!ちげっ……!!」
「まぁいいや。私はちゃんとわかってるし。」
そう言って冴木はベットに腰かけた。
おいおいおい!!
そこはダメだって!!
オレは床に座った。
「でも、いいなぁ。」
「なにが。」
「妹。」
「まだ言ってんのかよ。」
「私、姉妹で買い物行くのとか憧れなんだよね。」
「じゃあさ、」
「ん?」





「オレんとこに嫁げばいいじゃん。」





「なっ、えぇ!?」
………。
オレ、今なんて言った?
なんかするっと口が動いたんだけど。
嫁げみたいな……。
嫁げ!?
「えぇぇぇぇぇぇえええええええ!!」
「なんで言った本人が驚いてんのよ。」
「いや、なんでもねぇ。」
オレは片手で口元を押さえる。
熱が顔に集中していくのが分かる。
うわぁぁぁぁああああ!!
なに言ってんだオレ!!
付き合い始めてまだ3か月、手は繋いだけどもキスもそれ以上のこともしたことないのに。
さらに先のことを言った!?
「花井、それ本気?」
「ま、まぁ。」
「じゃあ、嫁ごっかな。」
「まじで?」
「妹、欲しいし。」
ん?
なんかその言い方、妹いる奴なら誰でもいいみたいな……
「花井のことも大好きだし。」
そう言って冴木は立ち上がり、オレの隣に来た。
「ということで、よろしくお願いします。」
ニッと笑う冴木の顔が近い。
「おぉ。」
互いの顔がだんだんと近くなる。
ファーストキスは誓いのキスになった。





誓いの……





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回遊魚


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