「冴木。」
そう後ろから声をかけられたので振り向けば、そこには天下の女ったらし島崎慎吾が立っていた。
「なにかよう?」
「あいかわらず冷たいねぇ。冴木は。」
「島崎以外にはあったかいよー。」
「なにそれ。差別?」
「そうですー女ったらしの島崎が私にかまってるとあんたにフラれた女の子たちの攻撃の標的が私になるんだから。」
「ふーん。でも、俺に冷たくするのは罪だぜ?」
だからお仕置きー
そう言って島崎は私の方に手を伸ばす。
私は身を固くする。
すると島崎は私のメガネに手を掛け外した。
「な、あ、ちょ!!返してよ!!私それがないとなんにも見えないんだからっ!!」
取り返そうとメガネに手を伸ばすとヒラリとかわされてしまった。
「だーめ。」
ちくしょー。
ここからじゃ島崎の顔なんかただの肌色だ。
おまけに距離感もうまくつかめない。
「ねぇ!!ホントに見えないんだってば!!」
「ホントに?」
「うん。」
「ふーん。」
島崎がニヤリと笑ったような気がした。
なんだかイヤな予感がする。
とか思ってると目の前が肌色に染まる。
「は!?えっ!?」
「動くなよ?」
そんなこと言われたって体がこわばって動けない。
だんだんと近くなってくる。
顔のパーツが鮮明になってゆく。
ちゅ。
なんてかわいいリップ音とともに唇になにかやわらかいものが押し付けられた。
そして名残惜しそうに離れていく。
「はい。返す。」
そう言って島崎は私にメガネをかける。
「……え?」
「ん?」
「島崎今なにした?」
「ちゅー。」
「……………はぁぁぁあああああ!?」
なんでなんでなんでなんでなんで!!
付き合ってもないのに!!
てか、ここ教室!!
あぁ、もう!!みんな見てるし!!
ほら!!島崎にフラれた子達も見てるじゃんか!!
しまいには『熱いねぇ〜』なんてひやかしの声と、口笛の音が鳴り響く。
「……どうしてくれるんだよ。」
「なにが?」
「さっき言わなかったっけ?」
「あぁ、俺がフッたやつがどーとかって話?」
「そう。」
「大丈夫だって。」
そう言って島崎は私の耳元に顔を近づける。
「俺がずっと守ってやっから。」
なんてささやかれて落ちないやつはいないだろう。
なるほどこうやって女を落としてきたのか。
「は?」
「え?声に出てた?」
「もろ。」
「まじか。」
「おぅ。つか、こんなことすんの初めてだし。」
「は?」
「俺、童貞だし。」
「そんなこと聞いてないんだけど。」
「お前、俺のこと女ったらしとか思ってんだろ。」
「あたりまえじゃんか。」
島崎はあからさまに大きくため息をついた。
「俺、冴木に会ってから彼女できてないんだけど。」
「だから?」
「お前ってバカなの?」
「失敬な。島崎よりは学年順位いいよ。」
そうじゃなくって…そう言って島崎は頭を抱える。
「あのさぁ、俺この短時間の間にお前に2回告白してんだけど。」
「どうゆうこと?」
「お前が好きだってこと。」
……………。
「ごめん。よくわかんないからもうチョイわかりやすく。」
なんて言ったら頭をはたかれた。
「いった!!」
「お前ホントバカっつーか鈍感!!」
あ、島崎真っ赤だ。
天下の女ったらしもこんな顔するのね。
「付き合ってくれってことだよっ!!」
半ば叫びのようなそれにクラスは湧き上がる。
「………それって、告白だったりするの?」
「そうだよ。」
「えぇぇぇぇぇぇえええええ!!」
「気づけよ!!つか、さっきから何回も告白っつってんだろ!!」













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ヒロインの前で格好つけても意味がなかった慎吾さん。
なんか可哀そうになってしまった^^;


回遊魚


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