右手に小さな赤いアンプ、左手にギターを担いであたしは屋上に続く階段を上っていく。
誰もいない屋上で歌うのがあたしの日課だ。
それは休みの日でも変わらない。
重く錆びた鉄の扉を開けて大きく息を吸いこむ。
「いい天気だー!!」
両の拳を天に伸ばしグーッと背伸びをする。
本日は快晴で適度に風もあり気持ちいい。
「あれ?」
いつもならこの時間はあたし一人しかいない。
でも今日は先客がいた。
「西広?」
あたしがそう呼びかけた人物は肩をびくりと震わせて振り返った。
「冴木?なんでここに……」
あ、目が真っ赤だ。
「あたしは歌いにきた。」
確か昨日の試合で西広の打席で負けっちゃったんだっけ。
そりゃ、泣きたくもなるよね。
「あ、そうなんだ。じゃあ、俺もう行くね。」
西広は俯いて扉の方へ歩き出す。
「ねぇ!西広っ!!」
ピタリと西広は歩みをやめる。
「泣いちゃうとストレス発散になって悔しさをわすれちゃうんだよっ!!知ってた!?」
「昨日、シガポとモモカンに同じこと言われたよ。」
クスリと笑ったのが空気で分かる。
「悔しさって忘れちゃだめじゃん?」
「そうだね。」
「ねぇ、西広。」
「なに?冴木。」






「応援歌歌ってあげる。」





西広は振り返って目を見開く。
そんな彼にあたしは笑顔を返す。
「次に向けて誰よりも頑張れるように、おまじない!!」
あたしは入学当時無断で引いた電気コードにアンプのコンセントを差し込んだ。
そしてケースから真っ赤なギターを取り出し肩にかける。
「冴木壱、西広のために歌います。」
曲はバンプのラフメイカーがいいだろう。
「ちゃんと聞いててね。」
「うん。」
西広はふんわり笑ってそう答えた。
その顔に少しドキリとしたのは秘密。
あたしが歌い終えたとき、満面の笑みで
「ありがとう。冴木。」
そう言われたとき恋に落ちたのはもっと秘密。
「次の公式戦、絶対に応援に行くから!!」
「じゃあ、格好悪いところは見せられないね。」
「西広の応援歌作っていくよ。」
「えー、それはちょっと恥ずかしいなぁ。」
クスクス笑いながら言う彼を本気で応援したいと思った。
「あ、でも。」
「ん?」





「応援歌を歌うのは俺だけにしてね。」





そう言って西広は練習があるからと屋上から立ち去った。
それって……
それってそれってそれって、
期待してもいいんでしょうか?




屋上応援歌






------------------
美丞大狭山との試合の後ってゆう設定です!!
文才なくてすいません!!
意味が分からなくてすいません!!

回遊魚


back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -