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「アントーニョくんが怖い」その3


「へ? 日曜日? 」
「そう! 俺とデート行く約束したやろ? 」
「……? 」
「この駅らへんに出来たカフェ行こう〜って話してたやーん! もう! 忘れてしもたん?? ほんま忘れん坊やねんから〜。」

このこの〜、とアントーニョは私の腕をツンツンとしたかと思ったらどこかへ去っていった。え、普段は嫌という程くっついている癖に何故こんな時にいなくなるのだ。私はアントーニョと遊ぶ約束をした覚えがない。というか日曜日はフランシスと会う予定があるのだ。かといってここでアントーニョにわざわざ訂正しに行くのも面倒臭い。自分で言うのもなんだが、彼はどうも私に執着をしている節があるのだ。これで私が別の男と会う約束があるから無理だと言ってみろ。面倒な未来が見えるぞ。

「どうしたもんか……。」
「ため息なんて吐いてどうしたんだ? 珍しいな、綺麗な顔が台無しになるぜ? 」
「フランシス。ちょうど良いところに。」
「あれ、スルー? 」

何だかキメ顔をしてフランシスが来たので話をつけることにしよう。とりあえず明日のフランシスとの予定はキャンセルせざるを得ない。あ〜……チョコケーキが食べたかったのに…………。

「え? キャンセル? どうしたの急に。」
「いや〜やむを得ない事情がありまして……。」
「どうせアントーニョでしょ? 相変わらず面倒臭くてねちっこいやつだな。俺なんか見てみ? 自由を愛してるからこそ
「だから会うの来週にしよ。ついでに見たい映画あるからその時に見に行こう。」
「またそうやってスルーするでしょ!!! みーーーんなそうやって俺を無視する!!! 」

プンプン怒っているフランシスを横目に、なんとなく携帯を見ると、アントーニョからの電話が何十件も来ていた。うげえ。


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「おはようなまえちゃん!!! 今日の格好むっちゃかわええわぁ。」
「ありがとう。ところで今日何するとか全然考えてなかったよね。今からだったら日曜日だから人混んでるかなぁ。」
「あ、大丈夫やで。事前に予約してるから! 」

パァっと太陽のような笑顔を浮かべたアントーニョは、私の手をスムーズな動きで握った。慣れてらっしゃる。しかし、私とお前はそんな仲だったか? よく考えて欲しい。モンモンとしていると、彼は着いたで、と言って店の前で立ち止まった。
ん? ここって……。

「ここオープンした時からずっと気になっててんなぁ。」
「ここは……。」
「俺何食べよっかなぁ、あ、なまえちゃんの好きなチョコケーキもいっぱい種類あんで! 」
「…………。」
「良かったなぁ、なまえちゃん! はよ入ろー。」

ここはフランシスと行こうと言っていた店ではないか。どうなってんだ。別に浮気をしている訳でもないし私が悪い訳でもないのに汗がたらりと流れた。

「あ、なまえちゃん。」
「ひゃいっ?! 」
「はは、何その返事〜。これさ、知り合いから貰ってんけど、これ食べ終わったらこれ見に行かん? 」

変わらずニコニコしているアントーニョが握っているのは映画のチケットである。しかしこのチケットは……。

「私が見たかったやつ……。」
「え?! そうなん?! いやーラッキーやわぁ! 良かったなぁ、なまえちゃん!! 」

いやいや、ラッキーなんですけど、これじゃあ元々フランシスと出かける際のプランと丸被りである。

「今日はいっぱい楽しんでな、なまえちゃん。」

私これ次フランシスと遊べるのだろうか?