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諦めて愛してもらおうか


※オメガバース
※内容が内容な故に注意。









「みょうじなまえさん。検査の結果、あなたはΩ性だと分かりました。」

薬を用意します、1日2回は必ず飲むように、発情のサイクルは…………そう目の前の医者が私に話しかけていたが、私は聞き入れることができなかった。Ω。オメガ。おめが……。まさか自分がそうなるとは思いもしなかった。頭の中が真っ白になる。なんとか医者から薬を貰い、フラフラと家に帰った。まさか、学校の検診で自分がΩだと分かるとは思わなかった。両親はどちらもβであった。両親にこのことを話すと、最初はびっくりしていたが、私のことを拒否せずに受け入れてくれてひどく安心した。Ωだと分かるや否や家を追い出される人がいると聞いたことがあったからである。抑制剤を切らさないよう、家族で協力していこう、と母が言ってくれて本当に救われた。医者が言うには、抑制剤を飲めば問題なく学校にも通えるとのこと。とにかくβだと思い込んで日々を過ごしていたため、Ωに関する知識は皆無なのである。

「明日からどうなるんだろうか……」

そう呟いてその日は眠った。


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次の日から問題なく学校に通えた。
周りの同級生は恐ろしく容姿が整った、恐らくαであろう男性ばかりなので、バレるのではないかと最初はヒヤヒヤしたが、抑制剤のおかげか周りに知られることなく普通に過ごすことができている。
検診の次の日は流石に何性だったかが主な話題になったが、βということにした。
αこそは見た目や能力でほとんど判別がつくが、βとΩの違いはほとんど分からないのである。そして予想通り、ほとんどの同級生、後輩、先輩がαであった。そのような中で、発情期になってしまったら……。想像するだけで恐ろしいので、私はポケットの中にいつも抑制剤を忍ばせていた。

「あー! なまえ! こんなとこにいた!」
「月永先輩、どうかされたんですか?」
「何って、なまえが作曲のこと教えてほしいって言ったんじゃんかー。忘れんなよ、時間が勿体無いだろ!」
「す、すみません。すぐ準備します。」

そうだった。今日は月永先輩と約束してたんだった。ここ最近検査結果のことばかり考えていて、予定を失念してしまうことが多かった。なんだかぼーっとしている。珍しく予定を覚えていた月永先輩に申し訳ない。鞄の中にまだ入れていなかった教科書やノート一式を入れ、先輩の元へ向かった。先輩はこちらが向かってきているのを確認すると、空き教室の方へ向かった。

「珍しいよなーなまえが忘れるなんてさ。いつもは逆なのに。」
「本当にすみません……。すっかり忘れておりました……。」
「いいけどさーべつに。いつもと違うからなんか面白いなっ」

そう言って先輩はワハハ、と笑った。さっきから先輩は一度もペンを握らず椅子に足を開いて座っている。私はというとペンを握って楽譜を書いていた。月永先輩が戻ってきてから週一回、作曲についての勉強会のようなものをしていた。先輩はチャランポランに見えて、作曲に関する才能は素晴らしいものだった。プロデュースをするからには作曲もしたいと思っていた私には、先輩との勉強会が本当にありがたいものである。

「おい、それ」
「痛っ、いきなり抓らないでくださいよ……。」
「そのコードはおかしくないか?俺だったらこうするけど。」

その代わり、先輩は意外と厳しかった。こうやって私の駄目なところはことごとく指摘される。しかし、先輩の助言は的確で、とても勉強になるのだ。助言通りペンを進める。もう少しで完成しそうだ。

「……っは」
「……? なまえどうかした?」
「す、すみません。なんかちょっと気持ち悪くて……。」
「え、マジ? そういやなんか顔赤いな。もう帰る? 家まで送るし! 」
「はぁ……い、いや、大丈夫です。さっきまで平気だったのでたぶんちょっとしたら治りそうなんで。もうちょっとで出来そうですし……。とりあえず、ちょっとお手洗い行ってきていいですか……。」
「……そうかー? りょーかい、待ってるぞ! 」

しかし、一向に体調は良くならなかった。それどころか酷くなっている。だんだん熱くなってきている体に、私は嫌な予感がしていた。急いで女子トイレに駆け込む。元々男子校だったのもあり、女子トイレの数は少なかった。入った個室でポケットから薬を取り出した。まだなったこともないし、サイクルもまだ理解していないが、恐らくヒートだ。発情期がそろそろ来ているのだ。だが、医者から告げられていた予定日とは大幅にズレていた。

「はぁ、急がないと、早くしないと……」

早くしなければ。ドッドッドッと心臓が動いている。今でもレッスンを行っている人はたくさんいる。この学院はαだらけだ。その状況でヒートを起こせば、最悪のことばかりが浮かび上がる。震える手で急いで薬を開けた瞬間であった。ブワッと汗が浮かび上がる。同時に私は個室の中でトイレにもたれかかるように倒れ込んだ。薬は私の手から離れ落ちる。あれを飲まなければ、という意識はあるのに体が動かない。体がムズムズするのに、対処法がわからない。助けて、くるしい、だれかたすけて。

「なまえ。」

声が頭にドクンっと響いた。月永先輩の声だ。その瞬間に私の体は囚われたようにカチッと動かなくなる。

「なまえ。ここにいるんだろ。お前、Ωだったんだな。」

嫌だ、なんでここにいるの先輩。早くどこかへ行って。抑制剤、抑制剤をのまなきゃ

「なまえ。ここを開けて。」

ドクンっ。

「なぁ、何してるんだよ。苦しいんだろ? 俺が助けてあげる。だから早く開けて。」
「だ、だめ、で、す先輩、早く、」

先輩は落ち着いたように言っていたが、ハァハァと息を荒くしているようだった。Ωのヒートにやられている。この状態で開けるのは危険だ。お互いのためでない。早くどこかへ行って、お願い。

「開けろ。」

ドクンっ!
心臓が大きく跳ねたと同時に、私の体は勝手に動き、トイレの扉を開けた。開けたと同時に先輩よ足が個室に滑り込む。その瞬間に先輩は私の体を抱きしめた。ゾクゾクっと背筋に何かが通った。

「ハァ……なまえ、いい匂いするぅ……。なぁ辛いよな? 俺が楽にしてあげるから、いいよな? な? 」
「せ、先輩、は、ぁ……だ、だめ、で、す、先輩、は、っあるふぁだか、らぁ……。」
「じゃあずっとこのままでいる? いいのか? 俺は別にいいけど……このままじゃお前、この近くを通った奴らに犯されるぞ? いいの? 」
「ひっ……い、いや……」
「そうだよな? 大丈夫、優しくするから。俺、なまえのことずっと好きだったんだよ! 嬉しい……まさかなまえがΩだったなんて! こんな素晴らしいことはない! なぁこれはきっと運命なんだ! なまえのヒートに初めて会ったのは俺なんだ! ねぇなまえ、うなじ、噛んでいい? いいでしょ? いいよな? な? 」
「ひっ、! だ、だめ、や、やめて! あっ」
「ハハッ触れるだけで感じてる……かわいい……もう絶対誰にも渡さない……俺だけの、俺だけのなまえ……ね、早くうなじ見せて、後ろ向いて、」
「せんぱい、やめ、ッあ、ひぃ、」

髪の毛が掻きあげられる。途端にひんやりとする首元。たらり、と汗が流れた。先輩の目は、熱っぽくぼんやりとしている。

「……いただきます。」



がぶり。