※本番は無いけど微エロ注意


部屋に備え付けられた丸窓から差し込む光が眩しい。暗く明かりのない室内に濃く陰影を付けている。

ベッドから身を起こしたなまえは、そうか、今夜は満月だったか、と思い当たった。


今日は昼間にシャチとベポが大量の魚を釣り上げた。そして、超新星である船長、トラファルガー・ローの首を取って一躍有名になろうとしたお馬鹿さん達の船から大量のお酒と食料、その他諸々の財宝を略奪した。横暴に思えるかもしれないが、これが海賊だ。
覚悟のない者は淘汰される、弱肉強食の世界。


豪勢な食事に手に入れた美味い酒。基本的に宴好きの集まりだ。それが始まったのはある意味必然だろう。

夕方のまだ日も落ちきっていないうちから飲んで、食べて、歌って、騒いで。
ローとなまえは大騒ぎして楽しむ船員たちを尻目に、座ってそれを眺めていた。

夜通し行われたその宴。船員たちのテンションが最高潮に達した時、なまえはローに船長室へ連れ込まれた。
そのまま何となく流され、ベッドに押し倒されて事に至った。



それがたぶん2時間くらい前の事。
部屋には情事独特の、湿った淫猥な空気の残骸がまだ残っていた。

宴で騒いでいた連中も既に寝入ったのだろうか。黄色い潜水艦も、時折聞こえる誰かのいびきが響く以外は静まり返っている。


ふと隣で静かに寝ている人を見た。普段は眼光鋭く開かれている目も、今は閉じられている。相変わらず隈が濃い。私を蹂躙する時間があるなら、そのぶん寝ればいいのに、となまえは思う。


乱れたシーツから覗く、海の男らしい褐色の肌。それに映える黒い刺青がセクシーだ。自分がこの極上の男の唯一の女なのだと思うと、世界中の女達に自慢したい気持ちが芽生える。



情事の最中ずっと声をあげていたせいか、喉が渇いた。若干ヒリヒリする。
水差しが置いてあるのはベッドサイドのテーブルで、ベッドから一度出るかローを跨ぐかしなくてはいけない。
幸い、ローはぐっすり寝ているらしい。これなら跨いでも平気だろう。
そう思い、上半身を完全に起こし、ローの顔の横にそっと手をついて体を支える。ちょうどローの顔の上を体が通過する体勢だ。そして支えたのとは反対の手を水差しへと伸ばした。
もう少しで取れる。そんな時だった。



「絶景だな。」



下を向くとローが目を覚ましていた。


「やだ、ごめん。起こした?」
「そりゃ隣でこんだけ動かれてんだ。おれはむしろ起きない奴の神経を疑う。」


それもそうかと思う。
しかし、とにかく今は水が飲みたい。そのままの姿勢で再び水差しに手を伸ばした。それに触れた瞬間、ローの手が腰から脇腹、胸の順にするりと撫で、ついでにその頂きをきゅっと摘んだ。


「起き抜けにいい景色が見れた。ありがとよ。」
「…っ、何するの。変態。」


ローがはっ、と鼻で笑う。


「その変態の下で夜な夜な鳴いて善がってるのはどこのどいつだろうな。」
「うるさい。」


思わず顔を赤くするが、くっくっと喉を震わせて笑うローに揶揄われたことに気がついた。
こんな事でいちいち腹を立ててもしょうがない。そう考え、手に取った水差しからグラスに水を移して飲む。


「俺にも。」


なまえが飲み干して空になったグラスに再び水を満たした。
それを手渡そうと差し出すも、ローが起き上がる気配はない。


「違ェ。教えただろうが。」


不機嫌そうにローが眉をひそめる。


「嫌よ。恥ずかしいでしょ。」
「誰も見てねェ。」
「そういう問題じゃないの。」


それでも一向に動こうとしないローに諦めを感じたなまえは、渋々といった様子で少し不機嫌な顔をしながら水を口に含み、体を傾ける。
そのままローの唇に触れると、咥内の水を移す。
口の端から溢れた水がローの頬を伝い、シーツに滲みる。

突然、開いたなまえの唇の隙間にローが舌を差し込んだ。
後頭部を手でがっしり掴まれてしまい、なまえは体を浮かせることができない。
いつの間にか、体は完全にローの上に乗せられていた。なまえの薄い腹からふくよかな胸まで、ローの硬い筋肉に覆われた体にぴたりと張り付いている。

頭を掴んでいない方のローの手は裸の体をあちこち弄る。腰を撫で、尻を掴み、また上へ撫で上げ今度は胸を揉みしだく。
その間、なまえの口内にいる舌も好き勝手暴れ回っていた。丁寧に歯列を舐め、激しく舌を絡ませて、吸う。決して逃れることはできない、それだけで腰砕けになりそうな濃厚なキス。
なまえからは我慢しきれずに漏れ出た、鼻から抜けるような甘い声が上がった。


ローが満足したところでようやく解放される。
濡れた2人の唇が艶かしい。
なまえはすっかり息が上がってしまった。


「…ッはぁ……やめてよ…もう寝るんだから。」
「残念ながら、おれは惚れた女がいい格好して目の前にいるのに我慢できるほど聖人じゃない。」

そう言ってなまえの内股に固くなったソレをぐりと押し当てる。


「ダメ。それでも我慢です。今日はもうしません。眠いから寝るの。私は貴方の腕の中で寝るのが好きなのよ。」


だからちゃんと付き合ってね。

そう言って笑うなまえが月光で照らされる。
乱れきってほとんど意味を成していないシーツの隙間から見える、白く美しい肌。部分的に散らされた赤い所有印。はっきりとした体の凹凸が作り出す陰影。それら全てがローの情欲をさらに煽るとを、なまえは知らない。


「裸で寝るのか。何もせずに?」
「うん。よろしくね。」
「仕方ねぇな。おれは生殺しか。」
「諦めて。今度、付き合ってあげるから。」
「そりゃ楽しみだ。」


ローに抱き込まれたなまえは幸せそうに目を細め、首を伸ばして彼の顎にそっとキスをした。
それを見たローも、これはこれでいいか、と思った。


そうして再び寝入った2人を、薄黄色の満月だけが静かに見守っていた。


good night my darling
幸せな夢を見ましょう
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