私は何でもかんでも同じように行動しないとダメなタイプの人間だ。

例えば、歩き出すのは右足からで服を着る順番は上から順に、靴は右足から履いて、階段を登るのは左足から。手を繋ぐのは右手で、手を繋がなくても隣を歩くときは人の左側。こんな感じ。ほかにもたくさんある。

その中のどれか1つでも間違えたら、その日1日は総崩れになってろくな事がない。


はっきり言ってしまえば順応性が無いのだと思う。


今までの彼氏は、生活の端から端まで細かく決めてる私について行けないと言って別れを告げてきた。


今の彼氏は他の人とは違う。


その事を話したら、彼は伊達眼鏡の奥にある切れ長の綺麗な目を細めて笑いながら言った。



「俺、順応性高いねん。」



彼、忍足侑士は小学校卒業までに計6回もの転校を経験し、中学では究極の俺様部長の下でテニスの全国大会優勝を目指していたらしい。

そもそも大阪出身で今関東に住んでる事だけでも、彼の順応性の高さが伺える。


「今までのなまえの男はなまえを全部抱えられるほどの力と器が無かったんやな。」


そう言った侑士は笑みを深くして、座っている私を後ろから抱き込んだ。
ちょうど侑士の顎が私の肩に触れる絶妙な身長差。


「俺はなまえ全部を抱えて、なまえも俺を全部抱えて…そういうのができる信頼関係を築きたいと思っとる。」


言い終えて私の右頬にキスをする。
そう。キスされるのは右頬がいい。


「そんで、たまに喧嘩して、仲直りして、またお互いをよく知っていっていこうな。」


侑士がそのまま寝転がるから、抱きすくめられてる私も一緒に寝転がる。


「さて、腕枕はどっちの腕や?」


笑いながら問うてくる彼に、少し頬を染めながら「左がいい」と答えた。


右か左か
(腕枕は左か…)
(うん)
(忘れんでおくわ)
(ありがとう。大好き)
(はは、照れるな…俺も好きや)
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