朝日影に邂逅
沖田礼司side
はじめまして。ぼくのなまえは沖田れいじ、といいます。かくれ里でゆいいつの子どもです。
でもぼくはさみしくないです。
やさしいおかあさんも、つよくてかっこいいおとうさんも、はたらきもののちづるちゃんも、どうじょうのおじさんたちも、みんなみんなぼくのかぞくだからです。
ぼくは、おかあさんやみんなを守れるくらいつよくなりたいから、どうじょうでけんじゅつを習っています。
いつかおとうさんよりつよくなりたいです。
「そこの童。新選組が隠れ住む里に案内しろ」
「え……」
かわべであそんでいたら、しらない男にはなしかけられました。
おかあさんたちを捕まえようとしている、しんせいふ、の人かもしれません。
そんな人にかくれ里のことをおしえたら、きっとおかあさんもおとうさんもころされてしまいます。
「ぼ、ぼくはしりません」
「ほう。香耶の血を引く貴様が、俺に嘘などつけると本気で思っているのか?」
「なっ……し、しりません!」
ぼくがうそをつけないことを、見やぶられてしまいました。
それにこの人、おかあさんのなまえを言いました。おかあさんをねらってるにちがいありません。
ぼくはもっていた竹ざおを竹刀のようにかまえました。
それを見て、男はめんどくさそうにためいきをつきました。
「俺は貴様らに敵対するつもりはない。おまえの父親にでも確かめるがいい。風間千景を知っているか、とな」
「かざまちかげ……?」
男はかざまちかげと名のりました。
かざまちかげ……おかあさんとおとうさんからきいたことがあるようなきがします。
おもいだそうとおもって、かざま……さん、からしせんをそらすと、かざまさんはいつのまにかぼくの目のまえに立っていて(うごきが見えませんでした……)、ぼくの手から竹ざおをはたきおとし、おびをつかんでぼくの体をもちあげました。
「あっ! は、はなして!」
「煩い。これ以上暴れれば沢に放り込む」
そんなことを言われたらおとなしくするしかありません。たぶんこの人はほんきでやるきがします。
かざまさんがぼくをかたにかつぎあげたとき、こんどはちがう男があらわれました。
「遅いぞ。天霧」
「申し訳ありません。やはり隠れ里は上流にあるようです。……ところで、何を拾ってるんですか」
「見て分からんか? この容姿……あの食えん男を彷彿とさせる」
「……まさか、沖田総司の息子ですか」
あぁ……かんぺきにぼくのすじょうがばれてしまいました……
まっ白になるぼくにむかって、あまぎり、という男は手をのばしてきました。
こ、ころされるんでしょうか。
「香耶殿と最後に別れたときに彼女のおなかにいた子供でしょうか。年齢的にも合いますね」
「え……?」
あまぎりさんは、やさしくわらってぼくのあたまをなでました。
かおはこわいけど、わるい人たちじゃないのかもしれません。
「ふん。危機感の足りん子供だ。おまえは今まさにかどわかされようとしているのだぞ」
「え、え!?」
「何がしたいんですか風間。わざわざ警戒心を持たせるようなことを言わないでください」
てきなんでしょうか……てきじゃないんでしょうか……?
わけがわからないまま、ぼくはかくれ里につれていかれてしまいました。
「あ、礼司…………と、ついでに風間」
「うわぁ千景君、超ひさしぶり〜」
「ふん。息災のようだな。無駄に」
(おもいだしました……かざまさん、鬼で、おかあさんのおともだち)
でも、おとうさんのてき。
(2012/12/22)
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