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月神香耶side



烝君に見つかってしまうというハプニングも乗り越えた私たちは、とうとう運命の5月を迎える。
歳三君に私たちのことを内緒にしてくれることを条件に、烝君は旧幕府軍に帰っていった。


この月は函館市内にも新政府軍が上陸し、私たちは予定通り5月10日には借家を引き払った。
ちょうどそのころ新選組は、函館山や市内の警備に当たっていた。




明治二年(1869)五月十一日
新政府軍の函館総攻撃がついに開始される。その大軍は旧幕府軍の意表をついて函館山の寒川から上陸する。
新選組の持ち場である弁天台場は、旧幕府が五稜郭と同様に北方守備のために築いた、海に浮かぶ砲台である。
函館山を占拠した新政府軍は、この弁天台場に激しい攻撃を加える。新選組隊士が台場から脱出しようとしても、函館市内はすでに新政府軍に抑えられており、弁天台場はすっかり孤立状態になっていた。
この知らせを土方歳三は五稜郭で聞いたのだった。
(抜粋:いっきにわかる新選組 山村竜也 PHP)




砲撃の音が地鳴りのように響いている。

「香耶さん、絶対……絶っっ対に、戦場に出てこないでね」

「わかってるよ」

総司君が何度も念を押すのを、私は苦笑してあしらう。
さすがにこの腹で刀を振り回そうとは思わない。ちなみに出産予定日は晩夏である。



敬助君や総司君、天霧君が戦線となる予定の一本木関門に待機する。顔が売れてる千景君は私の護衛だ。

五稜郭からは2kmほど。時刻は早朝。



史実では、今日。
歳三君が戦死する日だ。

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