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雪村千鶴side
板橋刑場で騒動があったころ、私たち新選組は宇都宮城をたった一日で陥落させていた。
しかしその四日後。
土方さんが決死の思いで落とした宇都宮城も、薩摩、長州、大垣、鳥取などの藩で構成された二万もの援軍が駆けつけ、あえなく官軍側に奪い返されてしまった。
負傷した土方さんは会津で療養を余儀なくされ、代わりに斎藤さんが新選組を率いた。
流山で散り散りになっていた隊士も終結し、そして……
近藤さんや香耶さんの処刑の報が伝えられたのも、このときだった。
「……総司はこのこと知ったかな…」
……香耶さん。
あのひとが処刑されたなんて、信じられるわけない。
「……首は晒されていない。もともとなかったのか……誰かが持ち去ったのかもしれないな」
薫もここに来て消沈してる。
「けどよ、綱道は香耶を羅刹の実験台にするために連れ去ったんだろ? 処刑なんてされたら意味がねえんじゃねえか?」
「それは……」
「つまり、処刑は偽装……かもしれねえってこと、か」
「ま、あくまで希望的観測だけどよ」
永倉さんや原田さんの言葉に、ほんの少し元気づけられた。
「沖田さんたちは新選組に戻ってくるかな……」
「特に総司だよなー…トチ狂って敵の本陣に突っ込んでたりしてなきゃいいけど」
いろんな人が抜けていく。
近藤さんに、山南さんに、沖田さんに、香耶さん……。
どうか、無事で。
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